私だけのヒーロー
この人は……素でこんなことしてきてるの?
早くなった心臓の鼓動がさらに加速する。
「心配してくれてありがとう、おかげで助かったよ」
笑ってそう言うたっくんに、私は心臓の音が聞こえないように、ただただ平常心を装いながら『どういたしまして』と言うしかなかった。
「じゃあ、私帰るね」
これ以上この人といたら危険……そう、私の脳が判断したので、早く帰ろうとその場を動こうとした。
その瞬間、たっくんに手首を掴まれた。
「家近いんだし、一緒に帰ろうよ」
突然の出来事に驚きを隠せない私をよそに、たっくんは当たり前のようにとんでもないことを言ってきた。
確かに、お互い一軒家で、距離は近く歩いて5分くらい。
だけど、たくさんの女の子と遊んでいるであろうモテ男のたっくんと、2人で帰るなんて私にはハードルが高すぎる。
男の子とまともに話したこともなければ、2人きりで帰ったことだってもちろんない。