君 色。 <短>
朱色。
「南。この公園、覚えてる?」
ふと、思い出したように呟いた。
君の目線の先は、私じゃなく……
鮮やかなオレンジがまどろみ始めたと思ったら
いつのまにか、薄い月がぼんやりと顔を出していた大きな空――
“少し寂しくなる”
確かケイちゃんがそう言っていた空だった。
「……さぁ、どうかな」
首をかしげてとぼけてみる。
答え方がわからなかった。
いろんな想い出があったから……
ケイちゃんがどのことを深い記憶として残しているのかがわからなかった。
ほら、だって
私達は、いつも微妙にズレてるでしょ。
始まりもココ。
待ち合わせもココ。
どんな話もココ。
突然の夕立に降られて、びしょ濡れになったのも、
夕暮れに見とれたのも、
線香花火に心が弾けたのも……
真っ青な下で
初めてキス、したのも――
全部全部
この場所だった。
そして
君が放った“サヨナラ”さえも――