君 色。 <短>



「初めてキスしたのもここだった」

「ケイちゃん……」


よかった。

ケイちゃんの小さな一言で、私の心は穏やかになる。


君の中での私の想い出は、きっと優しい形で残ってるんだってわかったから。


照れ臭かったり、ちょっと気分がいい時……

ケイちゃんはキュッと唇を噛み締める。



変わってないところ

またひとつ見つけた。




「本当に……なつかしいな」

「うん」


二人一緒に天を仰ぐ。



「南」

「ん?」

「綺麗になったな」

「本当!?」

「……うっそー」

「バカぁ!」


久しぶりに引っ掛かってしまった。

単純な私を茶化すケイちゃん。


私はケイちゃんの肩をドンと叩いた。



戻ってきたかも。

あの頃に……




「……うそ」

「え――」


ケイちゃんの表情が変わった。



月灯かりの下で見るケイちゃんの顔は、やっぱり前から知ってるケイちゃんの顔で…

だけど、何かが違う気がした。



「本当に綺麗になった」

「……」


急に真剣な顔しないでよ。

似合わないよ。



そんなこと言われて…


じゃあ私はどうすればいいの?

君は、何を求めてるの?



後から後から溢れてくる。

どこからか流れ出してくる。



ねぇ、ねぇ、ねぇ……

ケイちゃん――


……ヤバイ。

止まらないかも……



「……南?」



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