君 色。 <短>
「ねぇ、じゃあどうして……どうして、私を捕まえててくれなかったの?」
「それは……」
「どうしてあの時…何も言ってくれなかったの?
なんでいつもと同じサヨナラだったの?……あれは、どんな意味だったの?」
……私には
君しか居なかったのに――
「……南」
私は泣いていた。
久しぶりに流した涙には、色が付いてなかったことを思い出す。
心が先に泣き始めて
そのうち頬にも温かいものが伝った。
君の低い声が、私の名前を呼ぶ度に涙が押し出される。
押し込めた消えない想いに。
君の居ない場所をさ迷い続けて……
君以外に、また愛を芽生えさせることが恐くて
ずっと閉じこもっていたままだった、私の心が開いていく。
……やっと見つけた。
優しい温もりも
唇のやわらかさも
綺麗なまま残っていた――