君 色。 <短>
向かい側の君も、私と同じ顔。
“あっ”て……
気まずいような
戸惑うような――
そんなことまではっきりわかっちゃうなんて
つくづく、私の瞳はどうかしてる。
口を開けたままの私。
開けっぱなしなのはわかってるのに、戻すことに頭が回らない。
音を拒絶した耳に、再びノイズが響き出す。
私の電車が来た。
だけど私は乗らない。
……乗れない。
神経が通わなくなった足は、動かなかった。
あっち側でも電車が止まっている。
隔たれた電車で
私達の姿は、互いに見えない。
だけど多分……
ううん、絶対――
あの人も乗らない。
どっと人の減ったホームに、私だけが
――ぽつんと独り。
ほらね、やっぱり。
向こう側にも一人――
君が……
過ぎ去った電車の後に残されていた。
どちらからともなく、足が動き出す。
――互いの元に。
アイツだ。
あの人だ。
真っ青な空とキラキラの太陽の下で胸が爆発するみたいなキスをくれた
ずっと昔に忘れたアイツだ――