もうそばにいるのはやめました。


それから自然と「円」って呼ぶようになった。

円もたまに「寧音」って呼んでくれる。



始まりは最悪だったけど


少しずつ少しずつ変わっていった。


生活も、関係も。




――わたしの、気持ちも。




「これからは家族を頼れよ」



家族……。


胸が苦しくなったのはわたしだけ。

円は淡々と手を動かしてる。


なにげない一言だったのかもしれない。


だけどわたしはここを去っても両親と暮らせる反面、円はまた独りになる。



寂しくない……わけないよね。



「円はこれからもわたしを頼っていいからね!」


「お前のこと頼ったことなんかねぇだろ」



あ、そっか。

頼ってるのはいつもわたしだもんね。


あはは!と笑ってごまかそうとしたら、



「うにゅ!?」



両頬を片手で押さえこまれた。




「まあでも……寂しくなったら、イタ電でもしてうぜぇくらいかまいに行ってやるよ」


「!……ひゅん!」


「なんだって?」


「ひゅにゅぅっ!!」


「ははっ、わっかんね」




うん!って言ったんだよ。


寂しくても寂しくなくてもかまいに来てほしい。


こくこくうなずいてみせる。

円にいっそう笑われた。



お腹の底から、心から、笑ってる。


こんな満面な笑顔、学校じゃめったに見れない。



同居してる、わたし限定。


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