もうそばにいるのはやめました。


もっと見たいよ。

笑顔じゃなくてもいい。


ずっとこのままそばにいたい。


本当はここを離れたくない。



あと数時間で同居が終わる。

だから、ね。


誰よりも近くにいてもいい理由がほしいの。



「……ひゅひ」


「ん?」



こげ茶色の瞳に、まだ笑ってる円だけを映す。


両頬をつぶしてるごつごつした手に触れると、ゆっくり力が抜けて落ちていく。



「好き」



もう一回。

今度はちゃんと言えた。


届いた。



「……え?」


「好きなの!」



同居最終日に告白しようって決めていた。


いつからなんてわかんない。

気づいたら好きだった。


円の素直じゃないところも、わかりづらい優しさも。


好きで、大好きで。


わたしだけが気づいていて

わたしだけに向けられたら


きっとどうにかなってしまう。



いっそどうにかなりたい。


円のそばなら絶対幸せだろうから。



「わたし、円のそばにいたい……!」



わたし、誰よりも円と距離が近い自信あるよ。

円もわたしに心を開いてくれてる。


さっきみたいに笑ってくれる。



もしかしたら円もわたしのこと好きかも

って何度も妄想して


溺れるくらい自惚れた。


< 16 / 191 >

この作品をシェア

pagetop