この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

母親があきくんの相手をしている同じリビング内で、お父さんと向かい合って座る。

「病院から連絡があって、早々に検査結果を聞きに行ってきた」

お父さんの真剣な顔が事態の深刻さを物語っている。怖い、聞きたくない。逃げ出したい。でも、身体が動かない。

じっと一点だけを見つめる。まばたきひとつするのにも、緊張してしまう。お父さんの緊張感までもが伝わってきて息苦しい。

「再発は……まちがいないそうだ。今すぐにでも入院して、抗がん剤治療を開始したいと言われたよ」

「……っ」

九十%以上の確率で予想していた。でも、信じたかった。なにかのまちがいだって。息ができないほどの衝撃。椅子に座っているとグラグラと目の前が揺れた。

「だから……明日から、入院しよう。ごめんな、ひまり……っ」

お父さんの目が潤んで次第に涙がたまっていく。小学生のときに見た光景と同じだ。

「でもきっと、治るから……っ。がんばろう、お父さんもひまりのそばにいるから」

どれだけツラくても私は泣いちゃいけない。歯を食いしばって耐えた。

「大丈夫だよ……お父さん。でも、来週まで待って……お願い」

「ダメだ……っ。ひまりの身体が白血病細胞に侵されているかもしれないって考えたら……今すぐにでも」

「お願い……っ!」

「はっきり言うと……予後不良の型なんだ。抗がん剤も効くかわからない。その場合、春までは生きられないって……」

え……。

予後、不良……?

抗がん剤が効かなかったら……春まで、生きられない?

「だから、今すぐにでも入院して治療を……じゃないと……」

「あなた……それは言わないって決めたでしょう?」

「でもひまりはかしこい子だから……黙っていてもいずれ気づかれる」

「それでも、言いかたってものが」

「すまない……俺も焦っているんだ」

お父さんは目元をぬぐった。なにを言ってるの、この人たちは。理解が追いつかない。

ただぼんやりする頭でわかったこと。

私は……死ぬんだ。

「お願い……会いたい人が、いるの」

最後は私の粘り勝ちだった。部屋に戻ったあと、ずるずるとベッドに座り込む。じわじわと迫りくる恐怖。

なにもやる気が起きない。それからどれくらいぼんやりしていたのかはわからないけど、気づけば夜が更けていた。

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