美しく死なせてください
毒の話など、グレイソンたちはしたことがない。むしろそのような話をすることは禁止されていた。マチルダが兵士だった頃に聞いたのだろう。

「マチルダ、それは……」

「美しく死ねるなんて素敵よね?私、生きていてもどうしようもないもの!危険な存在なの。ねえ、美しく殺して!!私が殺した人たちみたいに、殺してよ!!」

マチルダは苛立ちを見せ、暴れようとする。グレイソンは慌ててマチルダを抱きすくめた。ジャラジャラと鎖が激しく音を立てる。

「殺して、殺して、殺して!!」

「マチルダ!落ち着くんだ。暴れたら体に悪い」

マチルダはこうして暴れ出すことが多くなってしまった。放っておくこともできず、スタンガンで気絶させた看守もいるほどだ。

数十分ほどマチルダはグレイソンの腕の中でもがいていたが、しばらくするとゼエハアと荒い息を吐き始める。グレイソンはマチルダをそっと離し、腕を掴んだ。

「マチルダ、君は生きないといけないんだ。君がしてしまったことを償うには生きるしかない」
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