極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい

流星side

………


「わっ…私!家政婦は辞められません!流星さんの側にいられないなんて、そんな…そんなの嫌です!」
「叶!?待てっ!」
書類を差し出すとそれも見ずに叶は突然立ち上がり叫ぶと俺の静止も聞かず出ていってしまった。
慌てて追い掛けエレベーターが閉まってしまうと、苛立ちを募らせチッと舌打ちして階段を駆け下りた。

まったく叶は何を勘違いしてるんだ。叶を手放すことなど無いと言うのに。
俺の言い方が悪かったのか?
帰った時、叶が家に居ていつものように出迎えられ、掃除をしてくれていたのを知って感無量になっていた。上手い言葉が出てこなく確かに回りくどい言い方をしたかもしれないが…。
逃げることはないだろう、逃げる事は!

1階まで駆け下りエントランスに出るとそこに和泉がいた。
「あれ?兄さん?」
「和泉、叶を見なかったか?」
「叶ちゃんなら今さっき血相変えて走って行ったけど?」
「くそっ、間に合わなかったか…」
階段を駆け下りたせいだろうか?胸が苦しく、叶を捕まえられなかったことに力が抜けた。
「にっ!兄さん!?」
ふらっとよろけ和泉が慌てて俺を支え近くのソファーに座らせた。
「大丈夫だ…少し目眩がしただけだ」
「ほんとにそれだけ?」
医者である和泉は俺の前にしゃがみ込み脈を取りながら訝しげな顔をする。
俺は暫く動けなくて顔色や目の下を調べる和泉にされるがままだった。
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