極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
顔を覆い自己嫌悪に陥ってると、「叶ちゃん?」と呼びかけられた。
「斗真さん…」
目の下に手を降ろし見上げると作務衣姿の斗真さんがお重を持って立っていた。
「どうした、こんな時間に」
「い、いえ。なんでもありません…」
酷い顔をしてるだろう今の顔を見られたくなくて俯くと、斗真さんはゆっくり隣に座った。
「何かあったんだろ?またこんなに震えて」
肩に触れられ自分が震えていたのを初めて知った。背中を擦られれふっと力が抜ける。
すると、我慢していた涙がホロリと溢れた。
「…なあ、叶ちゃんがそうやって泣くのは流星のせいだろ?」
「ち、違います。これは自分の不甲斐なさに情けなくて…」
擦ってくれる手が優しくて温かくて涙をボロボロ零しながら首を振る。
「そうだろうか?流星に関わる限りそうやって叶ちゃんは一人で泣くんじゃないか?」
「そんなことは…」
最後までは言い切れない。
私はいつも流星さんの態度に一喜一憂して最後は苦しくなって一人で抱えきれない感情を持て余してる。
「前にも言っただろう?叶ちゃんは流星から離れるべきだ。俺のところに来いよ。こんな泣かせるようなこと絶対しない」
顔を上げると真剣な目を向ける斗真さんに心が揺れる。
流星さんの側にはもういられない。
なら、優しい斗真さんのところに行けば私は救われるのだろうか……。
「斗真さん…私…」
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