極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
ちょうど今から出掛ける時間だ。
「悪い秀弥、忘れ物をしたからレジデンスに寄ってくれ」
「え?忘れ物ですか?私が取りに行きますよ?」
「いや、いい。すぐ済むから」
訝しげに見る秀弥を残しレジデンスに入って行く。家に入るときなぜか緊張感が走った。
リビングのドアを開け着物姿の叶に目を瞠った。ついじっくりと見てしまい、褒め言葉が出て来ずにいつものように意地悪い言葉が出てしまう。
「……馬子にも…」
「衣装!」
最後まで言う前に叶は遮るように言った。
からかわれたというのにニコニコ笑ってる叶に毒気を抜かれて素直な言葉が出てくる。
「…いや、似合ってるよ。少し大人びて見える」
「へへ、こんな綺麗なお着物貸していただいてありがとうございます」
貸したのではなくあげたのだが、まあいい。
ふと、叶の髪にかんざしが刺してあるのに気付いた。
「あ、これ大和さんが買ってくれたんです。お着物が素敵だからって」
「へえ、大和が…」
嬉しそうに頬を緩ます叶に面白くない感情が顔を出す。
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