あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
「須藤さん、起きられそう?」
その声に目を開けると養護教諭が私の顔を覗き込んでいた。
「はい」
一時間でも涼しい部屋で眠ると頭がすっきりする。
私は元気に体を起こした。
「大丈夫?苦しくない?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございました。」
私はそう言ってベッドからでた。そして保健室利用記録に名前を書こうとノートを手にする。

この高校では自分で保健室を利用した時にクラスと名前、理由や処置について記入するルールがある。これに記録をのこせば先輩の嘘が本当になる。私はノートを開いた。

するときれいな文字で私の名前が書かれていた。
『日付/8月2日 1-A/須藤知佳 理由/体育授業中に喘息の症状 対応/ベッドで一時間横になる 記入者/桐谷心平』
私はなんだか胸が苦しくなってその文字を指でなぞっていた。

ここに残さなきゃならないノート。でもずっと自分で持っていたい衝動に駆られる。
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