あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
「疲れただろ」
「・・・少し」
帰りの車内。帰りももちろん運転は先輩だった。
あたりはすでに真っ暗だ。
「せっかくの休みなのに悪かったな。」
「いいえ。楽しかったです。でも、先輩にばかりお金を出していただいてしまってすみません。」
「別に気にすんな。」
「ストラップ、大切にします。」
「それは会社につけてくんなよ。」
「なんでですか?」
「頭おかしいだろ。そんなトドつけてたら。一緒に営業回りたくないからな。」
先輩の言葉に同意しながら私が笑うと先輩も笑った。
「来週からは本当にお前が運転だからな。」
「はい。頑張ります。せっかく教えていただいたんで。」
私が気合を入れながら先輩を見ると先輩は穏やかに微笑みながら前を見ていた。

ハンドルを握る筋っぽい手がかっこいい。

今、この時は二度とこないとわかっているからこそ、一瞬一瞬を目に焼き付けたかった。
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