君がいれば、楽園

十二月二十二日 午後八時の発覚

 クリスマスとは無縁の生活を強いられてる人々が集うオフィスから、ようやく脱出できたのは午後八時近く。
 閉店間近の古本屋に駆け込み、取り置きしてもらっていた本を購入して店を出た時には、八時半を回っていた。

 どうにか間に合ったことに胸を撫で下ろし、今夜のコンビニスイーツは何にしようかと考えながら信号が変わるのを待つ視界に、見慣れた姿が映った。 

冬麻(とうま)……?」

 平均より十センチは高い身長。デスクワークではないことを感じさせるほどよく筋肉がついて引き締まった身体。
 アウトドアブランドの機能性重視の黒いダウンに、昨年のクリスマスイブにわたしがプレゼントしたグレーのマフラーをして、背の高い女性と寄り添って歩いているのは――彼だった。

 見まちがいだと思いたかった。

 でも、見まちがうはずがなかった。

 ふいに、女性が彼と肩を組んだ。

 恋人同士というより、友達同士でじゃれあっているようなその姿が、打ち解けた関係を象徴しているようだった。

 わたしが茫然と立ち尽くしている間に、イルミネーションで飾り立てられた景色の中へ、彼らは溶け込み、消えた。

 ――そういう……こと。

 いったい、どこに浮気の兆候があったのか。さっぱりわからなかった。

 イブの約束を二十三日にしてほしいと言ったのは、本当に仕事のためなのか、それとも彼女と会うためなのか。

 わからない。

――やっぱり、わたしには……人の心がわからない。

そう思った。
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