【短】チョコプリンセス〜甘い甘い誘惑に勝てはしない〜
その声は少しだけ、固かった。
「愛咲ちゃん、おはよ」
「あ…楽斗。おはよー」
「ちょっと話あるんだけど、いい?」
真っ直ぐな視線。
少し茶色かがった、まるでミルクチョコレートみたいな瞳が私を捕らえて離さない。
「う、ん。いいよ?」
「じゃ、こっち来て?」
そう言われて、連れて来られたのは楽器にまみれた音楽準備室。
ここなら防音してるし、何か言われても大丈夫かな?
そんなことを考えているとは、私の前を歩いていた楽斗が不意にこっち側に振り向いて、無言で私を招き入れるとそのままかちゃん、とおもむろにカギを掛けてしまった。
「楽斗…?」
「愛咲ちゃんさ、今年は誰かにチョコレートあげるの?」
「………へ?」
その一連の動作の素早さに驚いて、楽斗の顔を見つめると、少し困ったような何かを思い詰めたような楽斗の顔。
「楽斗…?」
「愛咲ちゃん、そのチョコレート…俺にくれないかな?」
「……え…?」
「返事は当日で構わない。…けど…今はこうさせて?」
ぎゅ
私は何が何だかわけがわからない。
というか、この状況についていけない。