【女の事件】黒煙のレクイエム
第31話
時は流れて…

8月3日のことであった。

この日は、Jリーグ・ファジアーノ岡山-カマタマーレ讃岐の試合が開催される日であったので、アタシはカンスタ(カンコースタジアム)へ行って、試合が始まる前とハーフタイムの時間帯にサンドイッチの売り子のバイトをしていた。

時は、ハーフタイムが終わって試合の後半が始まった頃であった。

アタシはサンドイッチの売上金を事務所に持って行って、アタシの取り分のお給料と売れ残りのサンドイッチを受け取ってスタジアムをあとにして、JR岡山駅の新幹線口の広場まで行った。

駅前の広場に着いたアタシは、ベンチに座って売れ残りのサンドイッチで遅いランチを摂っていた

その時であった。

「号外でーす!!号外でーす!!」

この時、新聞の号外が出たと言う知らせを聞いたので、一体何事かと思って気持ちが不安定になっていた。

その時であった。

つばきちゃんが、あわてた表情で号外を持ってアタシのもとにやって来た。

「あっ、いたいた…大変よ!!こずえちゃん!!ニュース速報が入ったわよ!!」
「えっ?ニュース速報が入ったって?」
「そうよ!!」
「あっ、たしか有名カリスマモデルさんがイケメンの韓流スターとおめでた婚のことかな?」
「そんなおめでたいニュースじゃないのよ!!とにかく号外を見て!!恐ろしいニュースが書かれているわよ!!」

アタシは、つばきちゃんから受け取った山陽新聞の号外を見た。

号外には、玉野市内の年金機構の事務所に臨時に派遣されていた東京にある本部の男性幹部職員のパソコンから標的メールによるウイルスに感染して100万件の年金受給者の個人情報が流出をした後、30人分の年金がだましとられていたと書かれていたので、アタシはより強い不安に襲われた。

一体だれがこんな恐ろしいことをしたのか…

あきよしのパソコンがウイルス感染の被害を受けた時は、海外の複数のサーバーを経由して標的メールが送られてきた。

今回の事案は、単体で標的メールが送られてきた。

その発信源が岡山県内だと言う可能性が高いので、岡山県警と警視庁が合同で捜査本部を立ち上げたと号外に書かれていた。

もしかしたら…

あきよしが、年金機構に激しいうらみを抱いていたので、ウイルスに感染するメールを送りつけて反撃をしたのではないのか?

アタシは、さらに強い不安に襲われていたので頭がサクラン状態におちいっていた。

同じ日の夜8時50分頃に、ウイルスに感染をしたパソコンの持ち主である男性幹部職員が家族に書き置きを残して家出をした後、東急電車の池上線の踏み切りで走ってきた電車に飛び込んで自殺した。

さらにその翌日のことであった。

踏み切り事故で亡くなった男性幹部職員が神奈川県にある広域指定暴力団のナンバーツーとナンバースリーの男と飲食の接待をしていた様子を週刊誌のやくざ担当の記者が隠し撮りをしていて、8月6日に発売される大衆週刊誌の最新号のトップ記事に掲載された…

8月7日のことであった。

亡くなった男性幹部職員にウイルスメールを送りつけたあきよしは、予め作っていた男性幹部職員の生命保険の証書を持って岡山市内にある生命保険会社の代理店に行って、死亡保険金1億円をネコババして、ホクホクとした表情で代理店を出たあと、柳町にある店舗型の風俗店へ遊びに行った。

しかし、降り悪くあきよしが風俗店の中に入って行くところを竹村さんの息子さんに目撃された。

竹村さんの息子さんは、あきよしが立ち寄った生命保険会社の代理店の従業員さんで、営業回りを終えて、代理店へ帰る途中であった。

竹村さんの息子さんは、代理店の手前500メートルで恐ろしい場面を見たので、あとをつけて様子を見ていた。

竹村さんの息子さんは、真っ先に竹村さんに電話をした。

知らせを聞いた竹村さんは、大急ぎで、てるよしの嫁さんに電話をした。

「分かりました…あきよしさんが家に帰ってきましたら聞いてみます…ご迷惑をおかけいたしてすみませんでした。」

電話の受話器を置いたてるよしの妻は、深いため息をついていた。

居間のソファーに座って山陽新聞を読んでいたてるよしは、竹村さんからの電話を聞いていたので、思い切りキレいた。

てるよしは、新聞をテーブルの上に思い切り叩きつけてからこう言うた。

「あきよしがまたなんか悪いことをしたのか!?」
「生命保険の代理店に行って…亡くなった年金機構の男性幹部職員さんの保険金を1億円を手にして…」
「どこかへ遊びに行っていたと言うのか!?」

そこへ、あきよしがふらりと帰宅をしたのでてるよしの妻はビックリして、話があるから来なさいと言う表情で、あきよしの腕を引っ張って行った。

「あきよし…座れ!!そこへ座れ!!座れと言うのが聞こえんのか!!」
「何だと!!アホンダラオンボロ兄貴!!」
「何やその顔は…あきよし!!座れと言っているのが聞こえないのか!?」
「何やオドレは!!」
「あきよしさんやめて!!お兄さんの言うことを聞きなさい!!」

てるよしの妻は、あきよしにアタシも一緒にあやまるから座ってと言うてあきよしを座らせた。

てるよしは、あきよしの顔を平手打ちで2~3回叩いた後、あきよしに思い切り怒鳴り付けた。

「あきよし!!オドレは生命保険の代理店に何をしにいっていた!!答えろ!!答えろと言うのが聞こえないのか!?」
「何やオドレ!!オドレよくも殴ったな!!」
「あきよし!!」
「あなたやめて!!けんかをしないで!!あきよしさん!!お兄さんに逆らわずに素直に答えなさい!!」
「何やオドレは!!オドレもよってたかってオレに暴力をふるう気か!!」
「お兄さんに逆らわずに素直に答えなさい!!どうしてたてついてばかりいるのよ!?」

たけよしの妻の言葉に思い切りキレてしまったあきよしは、たけよしの妻をグーで3回思い切り殴った。

(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)

「あきよしさん…どうしてアタシを殴るのよ…アタシが何をしたと言うのよ!?」
「オドレがオレのことをグロウしたから殴った!!ワーッ!!」

あきよしは、てるよしの妻をシツヨウにけりつづけていた。

(バーン!!バーン!!バーン!!)

思い切りキレてしまったてるよしは、固い棒であきよしの背中を思い切り殴った。

「あきよし!!何で義姉さんをけとばしているのだ!!義姉さんをけとばすのだったら出て行け!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!」

てるよしは、あきよしがぐったりとしていても固い棒でシツヨウに殴り続けていた。

妻は、泣き叫びながらてるよしを止めていた。

あきよしは、無抵抗の状態でボロボロに傷ついたあと意識を失った。

あきよしは、この日を最後にして目覚めなかった。

てるよしは、ぐったりしているあきよしを部屋に運んで、戸を閉めた後、そのままにして部屋を出た。

てるよしは、頭がサクラン状態におちいっていたが、はっとワレに帰った時にはあきよしをシツヨウに暴力をふるったことなどケロッと忘れていた。
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