【女の事件】黒煙のレクイエム
第34話
その日の夜のことであった。

アタシは、つばきちゃんと一緒に岡山市田町にある牛角(焼き肉レストラン)に行って、カルビ焼き肉のセットで夕食を摂っていた。

その時に、あきよしの両親がアタシが逃げることができないようにするために結婚をしていないきょうだいと再婚をさせようと考えているつもりだと言うことを、つばきちゃんに話した。

つばきちゃんは、のみかけのキリンラガービールが入っている大ジョッキを手にして、ひとくちのんだ後、アタシにこう言うた。

「こずえちゃんを離縁することができないようにするために…結婚をしていないきょうだいと再婚させることをあきよしの両親が考えているって…本当なの!?」
「はっきりとしたことはよくわからないけれど…サイアクだわ…あきよしと離婚をして、一定の金額がたまったら遠い街に行こうとしていたのに…結婚していないきょうだいのために再婚をしろだなんて…よりによってこんな時に…」

アタシは、キリンラガービールが入っている大ジョッキを手にして、ビールをゴクゴクとのんでから、つばきちゃんにこう言うた。

「あきよしの両親は…アタシが東日本大震災の震災孤児だからと決めつけて、結婚をしていないきょうだいと再婚しろと強要してはるのよ…だけど、次男は好きなカノジョでなければ結婚はしないとわめいている…四男は非正規雇用で安月給だから結婚しないと言うた…末っ子は、大学を休学したのでまたリューネン…嫁さんと言えば、オンラインゲームのキャラクターのメイドさんがお嫁さんだから結婚しないからなだって…ホンマにふざけてはるわ…その上に、一番上の姉がアタシが次男か四男と再婚することを強行したら、知人の男に電話して、知人の男の友人たちを利用して、アタシを集団レイプで犯して殺すとわめいているのよ!!あきよしの家にいたら、アタシは殺されてしまうかもしれない。」
「ますますサイアクな状況ねぇ…こずえちゃん、気持ちを強く持ちなよ。…こずえちゃんがそんな弱々しい気持ちでいたら、あきよしの両親のおもうつぼになってしまうわよ。」

つばきちゃんは、アタシに気持ちをしっかりと持ちなよと言うた後、残っているビールをのみほした。

それから3時間後の深夜11時過ぎのことであった。

アタシは、ローソンでバイトをしていた。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースにならべ帰る作業をしていた。

アタシがバイト中だと言うのに、てるよしの嫁さんがアタシのところへ突然やって来た。

てるよしの嫁さんは、アタシにあきよしの両親が困っているから帰ってきてほしいと泣きながら言うていたので、アタシは思い切りキレていた。

「あんたね!!アタシは2度と玉野には帰らないと決意して今日まで一生懸命になって働いておカネを稼いでいたのよ!!一定の金額がたまったらどこか遠い街へ行くことを決意したのに、どうしてアタシは結婚をしていないきょうだいと再婚を求めてくるのよ!?アタシは思い切り怒っているのよ!!なんとか言いなさいよ!!」
「こずえさん…困っているのはアタシなのよ…お願い…助けて…」
「はぐいたらしいわね(あつかましいわね)あんたは!!あんたはアタシに痛みを押し付けて自分だけ逃げようと思ってはるけど、そうは行かないわよ!!」
「こずえさんに悪いことをしたと思っているわよぉ…だけど、アタシは伊保田の両親に娘を預けているのよ…娘がおかーさんに会いたいと言うて泣いているのよ。」
「それじゃあ!!アタシは子供がいてへんからアカンと言いたいのね!!もうこらえへんけん!!」
「こずえさん…どうしてもてるよしさんの両親のお願いを受け入れることができないのですか?てるよしさんの両親は困っているのよ。」
「アホみたい!!あいつの両親はアタシが帰って来なかったらどのように困ると言うてはるのかしら!?」
「てるよしさんの両親は、あきよしさんがこずえさんを傷つけたことをおわびしたいと言うているのよ…罪をつぐないたいから、結婚をしていないきょうだいと再婚をしてほしいって…」
「なにクソたわけたこといよんかしらねぇ!!あいつの両親は頭がパッパラパーだから、そんなん信用でけんわよ!!」
「こずえさん、それじゃあこの先どうやって暮らして行くのですか?8年前の大震災で、身寄りをなくしているのに、一人でどうやって生きて行くのよ!?」
「あのね!!アタシは小さいときから親の自己都合とわがままが原因で各地を転々として生きていたので、生まれ故郷なんか最初からないのよ!!アタシは生まれた時からやさぐれた女なのよ!!あんたね!!帰んなさいよ!!店に居座る気なのかしら!?」
「居座る気はありません。」
「だったら帰んなさいよ!!」
「帰るわよぉ。」
「動きなさいよ!!」
「動くわよ…」
「早く動きなさいよ!!」
「だけど、このままでは帰ることができないのです。」
「ますますはぐいたらしい(あつかましい)わね!!店に居座る気ならば、アタシの知人に電話するわよ!!」
「居座る気はないわよぉ…」
「だったら帰んなさいよ!!」
「ですから、てるよしさんの両親のお願いを受け入れると言うてくれたら帰るわよぉ…」
「あんたね!!あいつの両親はアタシにどうしてほしいと言うわけなのよ!!わけのわからないことを店の中でグタグタ言うて営業妨害をする気でいるみたいね!!」
「こずえさん…てるよしさんの両親は…老後の楽しみをがまんする…家族のみんなも協力して、あきよしさんがこずえさんを傷つけてしまったことにたいしてつぐなうと言うているのよ。」
「できもせんことをいわんといて!!つぐないをすると言うけれど、つぐないたいと言うのだったら、命でつぐないなさいよ!!」
「命…それじゃ、てるよしさんの両親に死ねと言うことですか!?」
「ええ、その通りよ!!つぐないたいと言うのだったら、首を吊れと言うておきなさいよ!!」
「こずえさん!!」
「そんなことよりもアタシは、あんたにバイトのジャマをされたから相当怒っているのよ!!店に居座って営業妨害を続ける気ならば店長にお願いをしてケーサツか警備会社…ううん、ケーサツなんぞアテにでけんから、…神戸にいる知人に電話するけん…知人に電話して今治の親分にお願いして、伊保田のあんたの実家をダンプカーでペッチャンコにして、ぶち壊すから覚悟しときなさいよ!!」

思い切りキレてしまったアタシは、神戸にいる知人に電話をして、てるよしの嫁の実家をつぶしてくれとお願いしていた。

キャッチホンで、今治につながった。

「もしもし組長!!こずえよ!!ここにアタシをストーカーしていた女がいてはるわよ!!ストーカー女の実家をダンプカーでペッチャンコにしてよ!!…コラーッ!!逃げるな!!」

てるよしの嫁さんは、ヤクザにダンプカーでつぶされて殺されるかもしれないと思っていたので、こわくなってその場から逃げだした。

アタシは、冷めた目で足早に逃げていったてるよしの嫁さんを見つめていた。
< 34 / 70 >

この作品をシェア

pagetop