【女の事件】黒煙のレクイエム
第48話
ひろのりがカンドウされてから4日目のことであった。

ひろのりが北海道で交通死亡事故を起こしたことが原因で、ひさよはせっかく手にした女の幸せを泣く泣くあきらめることになった。

この日の午後、常滑市に本社がある建材メーカーの常務の夫婦が婚約者の男性を連れて7月に予定していた挙式披露宴を延期してほしいとお願いをするために家に来ていた。

義父は、挙式延期の理由があいまいだと怒っていた。

義父は、ひさよの婚約者に対して『オドレはふざけているのか!?』と怒鳴ってから、ひさよの婚約者の男性をボロクソに言いまくっていた。

常務の夫婦には『あんたかたと結んでいた運送契約は破棄だ!!』とわめき散らしたので、運送請け負い契約が破棄された。

ひさよは、父親が婚約者の家の名誉をズタズタにきずつく言葉を平気で口走っていたのを聞いたので、悲しくなって家出をした。

事件は夜9時過ぎに出川町にある公園で発生した。

「えっ…何なの…イヤッ!!イヤッ!!」

ひさよは、オオカミの覆面をかぶった4人の男にはがいじめにされたのちに、公園の中にある身障者用のトイレに連れ込まれてしまった。

その頃であった。

家では、義父母と義父の父親(ひろゆきの祖父)とひろゆきが心配そうな表情でひさよのことを心配していた。

そんなときであったが、アタシが夜のバイトを終えて家に帰ってきた。

「ひさよ…帰って来た…って…こずえさんだったの…」

義母がアタシをみてがっかりとした表情になっていたので、アタシはムッとした表情で義母に凄んで行った。

「何なのよあんたらは、アタシが帰ってくるなりにがっかりとした表情をしたのはどういうわけなのかしら!!アタシにイチャモンつける気なのかしら!!はぐいたらしいわね!!」
「こずえさん、アタシたちはひさよが家出をしたので、心配になっているのよ…」
「ふざけんなよ!!あんたたちは、アタシのことを憎たらしい目でみて、ひさよはかわいいかわいいかわいいと言うてはるみたいね!!」
「どうしてそんなに目くじらを立てて怒っているのよぉ…」
「怒りたくもなるわよ!!アタシはあんたらのことをこらえへんけん!!」
「こずえ…やめてくれよ…なあ頼むよ…」
「あんたは横から入ってくるな!!そういうあんたも、義姉の方がかわいいかわいいかわいいと言うて、アタシを憎たらしい目つきでみていたわね!!」
「誤解だよぉ…」
「誤解も都会もないわよ!!あんたも義父母たちとグルになってアタシを憎たらしい目つきでみていたから、この家の家族全員をひとり残らず殺すわよ!!」

アタシは、ダイニングにあった出刃包丁を手にしたあと、ワナワナと震える声で『義父母から順に殺すわよ!!』と叫んで、義父母たちをイカクしていた。

この時、義父母は必死になって『殺さないでくれぇ…』と言うて命乞いをしていたので、アタシは包丁を下げた。

その時であった。

ひさよがボロボロに傷ついた上に、泥で汚れて恥ずかしい姿になったまま家に帰ってきた。

ひさよは、白のブラウスを破られてブラジャーを引きちぎられてスカートがボロボロになっている姿で真っ赤な目でにらみつけながら泣いていた。

変わり果てたひさよを見た義父母は、気持ちを取り乱していた。

「ひさよ!!」
「ひさよちゃん!!」
「ああ…ひさよ…」
「ひさよ…ひさよ…どうしてかわいそうな姿になってしまったのだ…」

この時アタシは、思い切りキレていたので家出をするために荷造りをしていた。

次の朝のことであった。

アタシは、着替えとメイクをぎっしりと詰めたボストンバックとさいふとスマホと貴重品が入っている赤茶色のバッグを持って家出したった。

アタシは、家出をする前に義父母とひろゆきに思い切り怒鳴り付けて、ひどい大ゲンカを起こして、ひろゆきの頭をパンプスの金具が入っている部分で殴ったった。

「アタシね!!今日限りでこの家を出て行くけん!!この家はなんなのかしら!!北海道で発生をした交通死亡ひき逃げ事故の容疑者を家族ぐるみでかくまっているけん、もうこらえへんけん!!」
「かくまってはいないよ…こずえさん…お願いだから誤解をしない…」
「いいわけを並べてもダメよ!!あんたたちは、ひろのりをカンドウしたと言うけれども、ひろのりをカンドウしたからと言うて交通死亡ひき逃げ事故の責任を負わなくてもいいわけなんかはないでしょ!!あんたたちは自分たちがこすいことをしていることに気がついてへんいみたいね!!」
「分かった…分かった…こずえさん…お願いだからうちにいてくれ…ひろゆきにはお嫁さんが必要なんだよ…」
「何がお嫁さんが必要なのよ!!都合のいいことばかりを言うな虫ケラシュウト!!あんたは、アタシよりもひさよの方がかわいいのでしょ!!もういいわよ!!アタシは今日限りでこの家のお嫁さんをやめるけん!!」
「それじゃあどうするのだよ…明日からのごはんのこと…」
「はぐいたらしい(あつかましい)わね!!ごはんに困るのだったら外のごみ置き場の残飯をあさりなさいよ!!アタシはこの家から出て行くけん!!あと1時間したら、知り合いがダンプカーを運転してこっちくるけん…あんたらをダンプカーでぺっちゃんこにつぶすけん覚悟しておきなさい!!」

このあと、アタシはボストンバックと赤茶色のバッグを持って家を出ていったが、ひろゆきがアタシの行く手を阻んだ。

「待ってくれよ。」
「何をしているのよあんたは!!のいてよ!!」
「待ってくれよ…もう少し冷静になってくれよ…」
「何が冷静になってくれなのかしら…あんたはね!!一度アタシに去られんとこたえへん男やけん、アタシは出て行くのよ!!」
「どうしても行くのかよぉ?」
「ええ、その通りよ!!のきなさいよ!!」
「お嫁さんがいなくなったら、生きて行けないのだよぉ…」
「甘ったれるな虫ケラクソタワケ野郎!!」

(ドカッ!!)

アタシは、ひろゆきの顔をパンプスで力を込めて3~4回殴りつけた。

「思い知ったか!?あんたがひき逃げ事故の容疑者を家族ぐるみでかくまったのだから天罰が下ったのよ!!それと、うちの知人の組長の情婦(おんな)にてぇつけたことと、栄のキャバで仲良しだったコの身体を汚したけん、その分もふくめてかたきうちしたったけん…今度同じマネしたら殺すわよ!!」

アタシは、倒れてしまったひろゆきの背中をさらに思い切りけとばした後、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って家出したった。

情けないわねひろゆきは…

ひき逃げ事故の容疑者を家族ぐるみでかくまっていたけん…

天罰を喰らったと言うことを覚えておきなさいよ…

アタシは、春日井市を飛び出した後、再び放浪の旅に出た。
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