【女の事件】黒煙のレクイエム
第49話
ひろゆきの実家から逃げ出した翌日の午後のことであった。

アタシは、名古屋でつばきちゃんと再会をすることができたので、伏見通りにあるカフェレストランへ行って、お昼ごはんを食べていた。

日替わりのランチセットでお昼ごはんを食べた後、食後のコーヒーをのみながらふたりでお話をしていた。

アタシは、ひろゆきの家のことについては怒り心頭になっているけん、一生ダンナの家をうらみ通すより他にはない…とつばきちゃんに伝えた。

つばきちゃんは、アタシにこう言うた。

「サイアクね…北海道で発生した交通死亡事故の容疑者の男はこずえちゃんのダンナの弟で、合宿免許中に無免許で無保険…事故を起こした車は盗難車だった…ダンナの家族は容疑者の弟を家族ぐるみでかくまっている…ホンマに何を考えとんかしらね…」
「ホンマにサイアクだわ…」

つばきちゃんは、コーヒーをひとくちのんでからアタシにこう言った。

「北海道で発生した交通死亡事故のことだけど…今朝になって、…ひろのり…だったかしら…ひろのりと一緒に合宿免許中に酒をのみに行っていた友人のグループの男5人が道警に逮捕されたわ…男5人も合宿免許がイヤだったけん、合宿免許をやめるために飲酒運転をした…ひろのりに車を盗んでこいと言ったし…逮捕された5人も…希望していた教習所に入れなかったから腹を立てていたって…ひろのりはひき逃げの他にもチンピラを鉄砲で撃って死なせた上に、ホームレスの男性と警察官を鉄パイプで殴って死なせた…家族も家族で容疑者を家族ぐるみでかくまう…こずえちゃんもしんどかったわね。」
「しんどいどころじゃないわよ…相当つらい思いをしたわよ…今回はもう一生ダンナの家をうらみ通すしか他にはないのよ…」
「そうね…」

つばきちゃんは、コーヒーをひとくちのんでからアタシにこう言った。

「アタシもね…北海道を目指して旅をしてたけど、失敗したわ。」
「失敗をしたって…」
「多治見のホストクラブで…売れっ子のホストにだまされて借金をたくさん背負わされて…岐阜のソープで借金を返すために働いていたのよ。」
「ホストの借金を背負わされていたって…それじゃあ、いつ北海道へ行くのよ?」
「アタシ…北海道へ行くことをやめたわ。」
「やめたわって…」
「アタシ…よくよく考えてみたら、北国に行きたくなかったのよ…かといって、関東の水も合わんけん、引き返すことにした。」
「引き返すって、また大阪へ戻るの?」
「その通りよ。アタシは生まれも育ちも西日本だから、やっぱり大阪の水がおうとん(あっている)よ…こずえちゃんはどないするんねん?」
「どないするって?」
「名古屋に行くあてはあるの?」
「行くあて…」

アタシは、つばきちゃんに名古屋でバイトをして一定の金額がたまったら大阪へ行くことを伝えた。

つばきちゃんは、アタシに丸ノ内1丁目にあるガソリンスタンドを紹介した。

アタシは、家出をしてから2日後にガソリンスタンドでバイトを始めた。

ガソリンスタンドのバイトで足りない分は、栄1丁目にあるファミマでバイトをしてお金をかせぐことにした。

他にも、ナゴヤドームや岐阜・豊橋・浜松・福井の球場でプロ野球が開催される日にビールの売り子さんのバイトをしたり、名古屋市内のデリヘル店など…複数のバイトをかけもちしておカネを稼いで、一定の金額がたまったら大阪へ引き返すことを決意した。

アタシは、ひろゆきの家の家族や親族を一生うらみとおすと決意したので、さらに怒りが高まっていた。
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