【女の事件】黒煙のレクイエム
第51話
その頃であった。

北海道で発生したひき逃げ事件で特別手配をされているひろのりは、JR高蔵寺駅の裏手の酒場街にある小さな居酒屋にいてひとりぼっちで酒をのんでいた。

カウンターの席で、あびるように酒をのんで酔いつぶれているひろのりに対して、のみやのおかみさんは怒った口調でひろのりに言った。

「あんたーね!!大の男が合宿免許に失敗したくらいでいつまでもイジイジイジイジいじけてばかりで情けないわね!!あんたーね!!よく考えずに合宿免許の申し込みをしたけん、思わぬところで大失敗をしたのよ!!」
「何だよ!!オレを悪者みたいに言うのかよ…オレはなーんにも悪くないのだよ…合宿免許の事務局がどうでもよしに無作為に教習所を選びやがったからオレはダメになったんだよ…おんぼろ事務局のヤローがオレの人生を狂わせたのだよ!!バーロー!!」

ひろのりは、タンブラに入っているお酒を一気にのみほして、大きくため息をついた後『おかわりくれよ!!』とおかみさんに言うた。

「あんたーね!!ひとのせいにしてばかりいるけど、自分が失敗をしたことについては何とも思ってないわね!!それと、あんたーは何杯お酒をのんでいるのよ!!もういいかげんにしなさいよ!!」

おかみさんが怒った口調でひろのりにもうやめておきなさいよと言うた。

ひろのりは『のませろよ!!』と言うたので、やれやれと言う表情でひろのりにお酒を提供した。

「ありがとうさん…」

ひろのりは、おかわりの酒を一口のんだ後、合宿免許をやめてしまった理由をおかみさんに説明した。

「オレはな!!一生懸命になってな!!運転の技術と交通安全の法令の勉強をすることだけに集中してやってきたのだよ!!それなのに…オレの周囲は…教習所内にあるカラオケボックスやインターネットで遊んだりオプショナルツアーへ遊びに行ったり…温泉に行ったり…ピクニック行ったり…中には…カップルがイチャイチャしていたりしたのだよ!!オレが一生懸命になって運転免許を取ろうと必死になってがんばっているのに、周囲のやつらは遊び放題しやがっている!!だから頭に来て、家出して砂川市内の居酒屋へ酒をのみに行ってたんだよ!!合宿免許って、遊びで行くやつが行くところだとまわりがふざけたこといよったけん、そのように思うと…ふざけるなよバーロー!!ってさけびたいわ!!」

ひろのりは、お酒をごくごくと一気にのみほしたあと、再び大きなため息をついていた。

おかみさんは、大きくため息をついてからひろのりにこう言うた。

「なさけないわねあんたーは!!あのね!!うちの長男も、一級建築士の資格の試験に百ぺん(百回)落ちていたのよ!!落ちても落ちても…またがんばって勉強しなおして試験にトライして…101回目にやっと合格をしたのよ!!あんたーは合宿免許は遊びで行くやつが行くところと言ったわね!!合宿免許で来た人たちは一生懸命になって免許を取るためにがんばっている人たちがたくさんいるのよ!!オプショナルツアーとか教習所内にあるカラオケボックスなどは気分転換のためにあるのよ!!」
「ケッ、そんなんふざけとるわ!!あんたは遊びで合宿免許に来たひとのことをヨウゴしているのかよ!!資格とりたいと思ってはったけど、ヤーメタ!!フン!!」
「なさけないわねあんたーは…そないに言うのであれば、資格なんかとらんでええ!!あんたーはそれでええんやね…まあ、運転免許については危ないからやめておいた方がいいわよ…あと、危険物を扱う資格もやめた方がいいし、おカネを扱う資格もやめた方がいいわよ…と言うよりも、あんたーは人と仲良くすることがでけんみたいだから、どこの職場へ行ってもアカンみたいねぇ。」

おかみさんはひろのりにこう言っうた後、ため息をついていた。

その時であった。

トレンチコートを着た刑事8人が店にやって来て、ひろのりに詰め寄ってきた。

「ちょっとすみません…愛知県警と北海道警の合同捜査本部ですが…こちらにひろのりさんはいませんか?」
「課長、いました。」
「ちょうどよかった…探していたよ…ひろのりさん、起きてください…お迎えに来ましたよ…」
「お迎え?」
「砂川市の警察署の交通課の課長さんのところへ行くよ…6人が亡くなったひき逃げ事件のことでお話が聞きたいというていたよ。」
「何だよ…オレは無関係だよ…」
「あのね…あなたと同じ合宿免許に来ていたお仲間が逮捕されたのだよ…その中にあんたも入っているのだよ…今すぐに北海道へ行きましょう。」
「ヤーだね!!オレは北海道に行かないからな!!」

ひろのりは、刑事たちにあかんべーをした後、店から逃げ出した。

「コラ!!待ちなさい!!」

ひろのりは、約20分余り酒場街を逃げ回った末に裏の路地にやって来た。

しかし、この時に闇討ちにあってしまった。

「オラひろのり!!」
「ひっ…うわっ…」

(ドカッ!!)

ひろのりは、待ち伏せていたチンピラの男たち11人からシツヨウに暴行を受けていた。

「アニキ!!」
「分かった!!」

リーダーの男は、15センチのブロックで頭を思い切り殴りつけて、ひろのりを殺した。

殺されてしまったひろのりの遺体を、チンピラたちが車の中に積み込んだあと、事件現場から走り去った。

それから10日後のことであった。

ひろのりは、北海道砂川市のひき逃げ事件が発生した交差点にボロボロに傷ついた姿で信号機にぶら下がっている状態で亡くなっていた。

この時、事故現場付近に暮らしていた住民が暴徒化して、ボロボロに傷ついて亡くなったひろのり石を投げつけていた。

ひろゆきの家族は、ひろのりが亡くなったのに悲しむどころか問題は解決をしたからと言うてヘーゼンとしていた。

ひろゆきの家では、このあと取り返しのつかない恐ろしい事件のオンパレードが続いて行く。
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