【女の事件】黒煙のレクイエム

第57話

サナは、救急車で千種区内にある救急病院に搬送された後、緊急のオペを受けていた。

サナの胎内にいる赤ちゃんは、きわめて危機的な状況におちいっていたけん、早めに胎内から赤ちゃんを取り出す手術を行わなければならなかった。

それから４時間後に、緊急のオペが終了した。

医師からの話によると、サナの胎内にいた赤ちゃんは胎内から取り出した時、深刻な状況におちいった後に亡くなったとアタシに言うていた。

「そんなにひどい状態になっていたのですか…サナさんの胎内にいた赤ちゃん…」
「はい…残念ですが…」
「そうですか…分かりました…ではアタシは…」

アタシが帰ろうとしていた時、医師がアタシを止めた。

「ちょっとお待ちください。」
「何なのですか？アタシ…しんどいから家に帰るのよ。」
「あのー…サナさんのご家族の方に知らせないと…」

アタシは、ますます気だるい表情で医師にこう言った。

「あのねぇ…アタシはめんどいことに関わりたくないのだけど…」
「お気持ちは分かりますが…救急車を呼んでいただいたので…」
「だから…どうしたいと言うのよ!?」
「どうしたいって…サナさんのご家族の方をお呼びしないと…」

そこへ、ひろゆきが栄のナイトクラブで働いているオーストラリア人のホステスを連れてやって来た。

アタシは医師に『あのふたりがサナの友人ですから!!サナの友人に聞いてください!!アタシは帰りますので…』と言うて病院をあとにした。

その直後であったが、ひろゆきの家では大騒ぎになっていた。

ひろゆきがサナを妊娠させていたことが分かったので、病院からかかってきた電話を聞いたひろゆきの母親がビックリした。

「もしもし…それってどう言うことなのでしょうか!?サナさんのことについては知りませんけど!!」

この時、介護用のベッドで過ごしていたひろゆきの祖父が苦しいうめき声をあげた後、呼吸が止まってしまった。

「オヤジ!!オヤジ!!オヤジ!!しっかりしてくれ!!オヤジ!!」

ひろゆきの祖父は、呼吸が止まった後、亡くなった。

ひろゆきは、病院の医師が電話をしている間にオーストラリア人のホステスと一緒に行方をくらませた。

８月28日の夕方５時過ぎのことであった。

アタシはガソリンスタンドのバイトを終えて、疲れた表情でマンスリーアパートに帰ってきた時、つばきちゃんがあわただしい表情でアタシにこう言うて来た。

「あっ、こずえちゃん…こずえちゃん大変よ!!病院から電話がかかっているのよ!!早く出てよ!!」
「電話…」

アタシは、つばきちゃんからコードレスホンの子機を受け取った後に電話に出た。

「もしもし…こずえはアタシですが…えっ？サナさんが…病院から…いなくなった!?」

アタシはこの時、病院の医師からサナが病院から脱走をした後行方不明になった知らせを聞いたので、アタシはビックリした。

さらにその上に、サナが亡くなった赤ちゃんを連れて脱走をしたので、騒ぎがさらに拡大した。

何てこった…

サナが亡くなった赤ちゃんを連れて脱走をしてしたので…

騒ぎがさらに拡大をしていたなんて…

アタシはこの時、知らないうちに広まっている恐怖に襲われていたので、頭がサクラン状態におちいっていた。