【女の事件】黒煙のレクイエム
第62話
8月3日のことであった。

アタシに去られたひろつぐは、家出をした後、オーストラリア人のホステスと入籍をして喬木村内にある小さなアパートへ移り住みんで新生活を送っていた。

ひろゆきは。ひろつぐが家出をしたのでサナが作った手料理を食べることができることとアタシのことを働くお嫁さんであることを理由に役立たずと言うてアタシをブジョクしていた。

ひろゆきの母親は、ひろゆきの言葉にビンジョウして、アタシをグロウしていた。

アタシは、ひろゆきの家や親族を一生うらみとおすことを決めた。

ところ変わって、喬木村内にある自動車教習所にて…

ひろつぐは、教習所の事務所で与えられた仕事をもくもくとこなしていた。

ひろつぐが働いている教習所は、合宿免許でおなじみの教習所で教習所内にはカラオケボックスやネットカフェなどがあって、オプショナルツアーなどもあるので、長野県以外の地域から来ている人たちでにぎわっていた。

ひろつぐに与えられた仕事は、飯田市と周辺の地域から通っている教習生が滞納している教習料金の督促状を作るお仕事と教習生の家まで行って催促をしてくることであった。

時計のはりが正午になったので、お弁当の時間になった。

この時、ひろつぐの直属の上司の神山さんがお給料からの支払いで注文をしたお弁当を持って来て一緒にお弁当を食べませんかと優しく声をかけてきた。

神山さんは、アタシの亡くなった実父の遠い親せきのおじでアタシに再婚をしろと命令口調で言うた市議会議員さんの親友であった。

お弁当を食べながらの会話は、いつも決まってアタシのことばかりであった。

神山さんは、優しい声でひろつぐにこう言うた。

「ひろつぐさん…こずえと仲良く幸せに暮らしているかな?」
「えっ…またこずえのことかよぉ…」
「ひろつぐさん、どうしたのかな…こずえの話となったらいつもキゲン悪そうな声になっているじゃないか…なにがあったのかなぁ?」
「うぜえんだよ…あんたがこずえのことを小うるさく聞いてくるから、イライラしてんだよ!!」
「私は、こずえと仲よく暮らしているかどうかをたずねただけだよ…」
「るせぇんだよ…あんたはこずえとどんな関係があるのだよ!!」
「どんな関係があるのかって…それはどう言うことなんだね一体…」
「意味ねえよ…こずえはオレのことをグロウするだけグロウする女だから頭に来ているんだよ!!」
「こずえが、ひろつぐさんをグロウしたって?」
「本当のことだから言うているんだよ!!」
「こずえにどんな落ち度があると言うのかな?」
「だから…あんたはどうしてこずえのことをヨウゴするんだよ!?」
「こずえは、18年前の大震災で親と家をなくしているのだよ。」
「東日本大震災の震災孤児だからこらえてやれと言いたいのかよ!?」
「どうしたのだね…そんなこずえのことがイヤなのかな…」
「イヤに決まっているでしょ!!好きなカノジョがほしいと思っていた時にどうして止めたりしたのですか!?神さまがお嫁さんを選んでくれるよと言うから、こずえと結婚をした…課長はこずえが過去に男がらみのトラブルを起こしていたこととアニキとの間で深刻な夫婦間のトラブルを起こしていたことに加えて、暴力団にかかわっていたことを知っていてこずえを選んだのかよ!!オレ、近いうちにこずえとこずえが出入りしていた暴力団関係者とその親玉の長州組に対して1京(いっけい)円の損害賠償を払えと言う裁判起すから!!」
「裁判を起こすって!?」
「オレは本気や!!」

ひろつぐは、神山さんに裁判を起こすことを言うた後、お弁当を残して外に出ていった。

ひろつぐは、神山さんにアタシが暴力団関係者とつるんでいることを理由に言いたいことをボロクソに言いまくっていた。

その上でひろつぐは、民事裁判を起こしてアタシに1京(いっけい)円の損害賠償を払えと言うてはったので、アタシは『何なのよ一体あんたは!!単にアタシのことが気に入らないだけじゃないのよ!!』と怒っていた。

アタシは、ひろつぐの家と親族に対して徹底抗戦をかまえることを決意した。

その日の夜9時頃のことであった。

アタシがバイトをしているローソンにサナがやって来て、アタシに帰って来てほしいとお願いをしていた。

アタシは『あんたたちの家の家族と親族たちをまとめて裁判に訴えて、100京(ひゃっけい)円の損害賠償を払えと訴えることにしたけん!!』と言うて怒っていた。

アタシは、サナにより激しい怒りをぶつけながら駐車場のゴミ箱の整理をしていた。

「あんたね!!アタシはあんたらの家と仲直りをする気持ちはないけん!!アタシは、あんたたらから100京円の賠償金を受け取らないと気がすまんけん、思いきりイラついとんのよ!!分かっとんかしらあんたは!!アタシは今バイト中だから、帰んなさいよ!!」
「こずえさん…どうしても家には帰らないと言うのでしょうか…ひろつぐさん…」
「ひろつぐとあんたのダンナのことは一生うらみとおすと言うてはるでしょ!!そんなことよりもアタシはあんたのことでイラついとんのよ!!」
「アタシのことでイラついているって…」
「あんた!!あの時の騒ぎが原因で、アタシはガソリンスタンドのバイトをクビになったのよ!!どないしてくれるんで!!あんたはあの時、どうして自分の命を絶とうとしたのかしら…またあんたはアタシをクビにさせるきなのね!!」
「こずえさん…」
「何なのよあんたは!!アタシにイチャモンつけるためにここへ来たのかしら!!」
「イチャモンつけに来たのではありません。」
「いいわけばかりを言わんといてや!!アタシはバイト中で忙しいのだから帰んなさいよ!!」
「帰るわよ…」
「今すぐに帰んなさいよ!!」
「分かっています…だけど…このままでは帰ることができないのです。」
「はぐいたらしい(あつかましい)わねあんたは!!そうやってあんたは店に居座って営業妨害をして、アタシにイチャモンつける気でいるのでしょ!!」
「違います…」
「だったら帰んなさいよ!!」
「このままでは帰ることはできないのです。」
「ますますはぐいたらしい(イラつく)わね!!何でこのまま帰ることができんのかしら!!あんたは誰に頼まれてここへ来たのかしら!?」
「誰に頼まれたって…神山さんです…ひろつぐさんの職場の上司の…」
「神山のクソタワケジジイがアタシにイチャモンをつけてきたのね!!」
「ですから、イチャモンをつけるために言うたのじゃないのよ…こずえさんが震災孤児だから…」
「やかましいわね!!あのクソタワケジジイはアタシが震災孤児だからかわいそうだと決めつけているのよ!!アタシは、さっきのひとことでドカーンとキレているのよ!!アタシはひろつぐの家に対して100京円の損害賠償を払うこととあんたが起こした騒ぎが原因でガソリンスタンドをクビになったことで怒り心頭になっているのよ!!あんた、店に居座って営業妨害をしてイチャモンをつけたわね!!今から神戸にいる知人の組長に電話して、あんたの生まれ在所の地区にヤクザ送り込むから、覚悟しておきなさい!!」

アタシはスマホを取り出して、知人の組長に電話してサナがアタシにストーカーしていることをチクッたった。

サナは、ヤクザ連中に殺されると思ってその場から逃げだした。

何なのかしら一体…

サナは何を考えているのかしらね…

アタシは、冷めた目付きでサナを見つめながらこうつぶやいていた。
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