【女の事件】黒煙のレクイエム
第9話
その日の夜8時過ぎのことであった。

場所は市内仲町2丁目にある居酒屋さんにて…

居酒屋さんのカウンターの席にギンゾウがひとりで座っていて、やけ酒をあおっていた。

ギンゾウは、亘理郡の本籍地の家の近辺で暴れるだけ暴れまわった末に帰る家をなくして再びやくざの世界に出戻ることを決意した。

しかし、ギンゾウは気が小さい性格なので、やくざの親分にお願いをしに行く勇気がないので、路頭に迷い続けていた。

この時ギンゾウは、ぐでんぐでんに酔っていて歩行が困難になっていた。

店のおかみさんは、ぐでんぐでんによいつぶれてしまったギンゾウに怒った口調でこう言うた。

「あんたーね!!もうええかげんにしなさいよ…大の男がぐでんぐでんに酒に酔ってわけのわからないことばかりをならべてグダグダ言わないでちょうだい!!あんたはまだ若いのだからやり直そうと思えば何回でもやり直しはできるのだから、もう一度ラーメン屋さんの大将にお願いをして、雇ってもらいなさいよ!!」
「ヤーダーね…もうオレはカタギの暮らしに戻ることができないのだよ…オレはやくざの世界に出戻ると言ったら出戻るのだよ…あのラーメン屋さんには二度と戻るものか…バーカ…」
「どうしてイヤなのかしら!?」
「ラーメン屋さんの大将がオレに店を持てと言うたからやめたのだよ!!オレは店を経営して行く自信がねーのだよ…ケッ…」
「あんたーね!!グダグダ言わずに、トライしなさいよ!!」
「トライしろって…」
「あんたね…ラーメン屋さんの大将は、あんたが文句ひとつ言わずに店の仕事をがんばって覚えようとする意欲があることを見込んで店を任せようかなというているのよ!!あんたが意欲的にがんばっているから、東京に出店する予定のお店を任せようかな…のれんわけしてあげようかな…大将がそのように思っていた時、あんたができん(できない)と言うてやめたのでしょ!!…あんたは何やっても三日坊主で終わる性格だから、何をやってもアカンのよ!!あんたのお父ちゃんもいかんし、あんたのおいやん(おじさん)とおばやん(おばさん)も情けない性格だし…おじいやん(おじいさん)もひいおじいやん(ひいおじいさん)の性格が悪いからあんたはダメになったのよ!!」
「亘理郡の家のことなんぞ知るか…亘理郡の本籍地の家のコシュがな!!オレが必死になって頭を下げて…カンドウをといてほしいとお願いをしているのに…あのくそあほんだらコシュが口をへの字に曲げてプンとしていたのだよ!!だから頭に来て胸ぐらをつかんで思い切りどついたのだよ!!」
「あんたーね!!それだったらどうしてねばり強く説得をしなかったのよ!?どうして腹を立てて家のコシュをどついたりしたのよ!?…と言うよりも…あんたーの家のコシュをふくめて親族はみんなぼんくらばかりなのよね…」
「その通りだよ…亘理郡の本籍地の家の親族はみーんなぼんくらなんだよ!!ぼんくらのくそあほんだらばかりなのだよ…コシュがぼんくらなら親族はみーんなぼんくら…オレは超ぼんくらなのだよ…」
「あんたーね!!自分のぼんくらをほこらしげに自慢しないでちょうだい!!」
「けっ…何がトライしろだ…オレは…チャレンジして行こうと言う気持ちがなえてしまったのだよ…バーロー!!」

ギンゾウは、カウンターに置かれている徳利に入っているアツカンをひとおもいにごくごくとのんでいた。

ギンゾウはこの時、メイテイ状態を通り越していたので、いつ暴れだすのかわからなくなっていた。

(ガラガラガラ…)

その時であった。

ガラの悪いチンピラの男5~6人が突然店にやって来た。

「ジャマするで!!」
「あっ…アニキ!!ギンゾウがいました!!」
「何だと!!」
「オラギンゾウ!!」

おかみさんは、ガラの悪いチンピラの男が暴れる手前に来ていたのでお店の中で暴れないでと言うた。

「ちょいとあんたたち!!店の中で暴れんといてくれるかしら(暴れないでよ)!!」
「分かってるわ!!オラギンゾウ!!表へ行くぞ!!」

チンピラの男5~6人は、メイテイ状態を通り越しているギンゾウのえりくびをつかんだ後、店の外に出た。

ところ変わって、酒場の露地裏にて…

ギンゾウは、チンピラの男5~6人に組長のオンナに手をつけていたことを問い詰められていた。

「オラギンゾウ!!オドレよくも組長の愛人の女に手をつけてくれたな!!」
「このまま逃げようなんてそうは行かないぞ!!」
「何だよ…しらねーよ…オレはしらねーよ…」
「何や!!オドレは組長の女に手をつけておいて逃げようたってそうは行かないぞ!!」
「何や…ワーッ!!」

この時、ギンゾウは近くにあった鉄パイプを手に取って、ワーッと叫びながら殴りかかって行こうとしていた。

しかし、その場でこけてしまった。

「何だよギンゾウは…」
「ワーッと叫んで殴りかかって行こうとしていたら…転んでしまった…」
「まあええわ!!この間はうちのかわいいシャテイ4人を鉄パイプで頭を殴って死なせたのだからな!!やっちまえ!!」

ギンゾウは、5~6人のチンピラの男たちからシツヨウにけられてしまった。

チンピラたちは、近くにあった空の酒のビンでギンゾウを殴り付けた後、その場から立ち去った。

それから二時間後のことであった。

ギンゾウは、ボロボロに傷ついた姿で夜の街をトボトボと歩いていた。

「ううっ…しゅうか…しゅうか…ううっ…つらいよ…」

ギンゾウは、大好きだった義母の名前を呼びながら泣きじゃくっていた。
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