Ⓒランページ
付き合い始めてから1ヶ月が経った6月2日。
いつものようにアプリにログインし、カフェスタイルな男の部屋で話していると、男が急に、「LINEを教えてくれないか?」と言った。
「LINE?」
「そう、LINE」
「必要あるかな? ここで十分会話できてるわけだし」
キミは男のその提案が少し怖いと思った。それと同時に私は彼のことを信用していないんだなということに気付いてしまった。
「まあ、そうだよね。ごめんね」
男がキミに謝る。アプリにはお辞儀をするアクションもあるのだが、それは使わず。そこがまたリアルで、本当に申し訳ないと思っているのと断られた悲しさが如実に表れていた。
何だか雲行きが怪しくなってきたように感じる。これは残念だけど彼とはもう終わりだろうか。キミはそんなことを考える。考えて、それから少し妥協して。
「まあでも、いずれはそうね。交換する日がくるのかな」
軽く濁した返事をした。男のアバターはアクションをせず、
「そうだね。きっとそうなる気がする」
そう返事をし、それからは特に何も話すことがなくなり、お互い現実世界へと戻っていった。