Ⓒランページ
黒猫は三日月にもたれかかって、ギターを弾きながら歌を歌う。歌はバラードがいい。夜だ。夜はやっぱりバラードに限る。
それをキミがうっとりした表情で眺める。黒猫がキミに気付く。そしてこう問いかける。
「あなたは運命って信じる?」
キミは当然答える。「信じる」と。
「なら、運命って一体どういうものだと思う?」
黒猫の問いにキミは「必然と同じものだと思う」と答えた。
それを聞いて黒猫は笑う。クスクスと嘲笑に似た笑い。
「運命ってのはそうねえ……例えば素敵な男性と出会うことが必然だとして、どうしてあなたは何も準備をしなかったの?」
黒猫の問いにキミは首を傾げた。
「必然って必ずそうなる、それ以外はありえないって意味でしょ? つまりあなたは素敵な男性と出会うことを知っていたってことになる。それなのにあなたは何の準備もしなかった。それはどうして?」
「だってあれは、本当に予想外で、出会ってから初めてああ、この人が運命の人だったんだって、この人と出会うことが必然だったんだって後になって気づいたんだもん」
黒猫はまた笑う。
「私はね、例えばの話をしたのよ? 私はあなたが素敵な男性と出会うとしてって例えばの話をした。でもおかしいわね。あなたは今、『あれは』とか『この人』って表現を使った。まるで本当に運命の人と出会ったみたいに」
キミは赤面した。黒猫はいよいよおかしくなって、声をあげて笑った。
「まあいいの。私にはあなたのことなんて、何でもお見通しなんだから。だから聞いたのよ」