極甘クールな芸能人幼なじみの意地悪な溺愛

こっちに戻ってきてからは、毎日が空虚で心が擦りきれそうだった。
無垢な笑顔が忘れられなくて、泣かせたことは悔しくて。


それを悟られないように努力はしてたけど、真於たちにはすぐ気づかれてしまったみたい。


「この後生放送だけど平気?」


「あたしと真於だけで行けないか確認してくるよ」


「いや大丈夫だから行こ」


二人は気遣ってくれたけど、仕事に穴なんか開けられないし、そんなことをしたらきっと紗知は自分を責めてしまう。


あの時の優しさを裏切りたくないなら、クールで何にも動じないこれまで通りの一佳でいないと。


それは今まで演じてきたどんな役よりも難しかったし、おまけに事務所の上の人からは事実を話すようにって召集までかかった。


でもそれで一般人の紗知を巻き込まないようにアナウンスしてほしいと直訴できたのはよかったと思う。
事務所が否定してくれたら、紗知は安心できるはず。


もう大丈夫だよ。
何も考えないで好きな人たちと好きに過ごして。
美味しいもの食べて、好きなアニメ観ていっぱい笑ってて。


俺は目の前の仕事に向き合うことだけ考える。
一佳が変わらずキラキラしてれば、紗知はちゃんと前を向けるはずだから。


机の上に置いてったあの似顔絵、今頃はもう見てんのかな。


ぼんやりしててマイペースで、何してものろまだった俺の中に星があるって教えてくれたのは紗知。
俺は彼女の絵のファン第一号。
10年越しの伏線回収だよ。
紗知の夢、これからもずっと応援してるから。


番宣も、三人でそつなく上手くこなせてたろ?
キスシーンについて聞かれたけど、キスについて答えたことには気づいてないかもな。


あの時はカメラの向こうに紗知がいるって思ったから初めてのキスの時のこと、話したくなったんだ。


いつか、一佳としても那月としても紗知を幸せにできるようになるから、それまでよそ見しないで待ってて。


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