私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
「スマホお借りしてました。パスコードは松本さんが教えてくれたので、みーたんのお世話にはげんでいた次第です!」

「みみみ、みーたんのお世話だと!?」

 釣り上がり気味の二重まぶたが細かく痙攣するのを見て、ヤバいと思った。絶対に叱られると思ったのに。

「ヒツジ、ちょっと出るぞ……」

 スマホを持っていない私の手首を痛いくらいに握りしめるなり、無理やり引きずって部署を出る。隣のミーティングルームに入って、私の体を閉めた扉にぎゅっと押しつけた。

「おい、みーたんのお世話をして気分を害したり、傷つけたりしていないだろうな?」

 壁ドンならぬ、扉に腕を突き立てながら見下ろす、須藤課長の迫力ならびに視線が鋭くて怖い。

「傷つけるなんてとんでもない! 猫じゃらしで遊んで、仲良しレベルをあげてました……」

「……俺のみーたんは、猫じゃらしで遊ばない。見え透いた嘘をつくなよ」

 不機嫌を凝縮した声色に、須藤課長の怒りをひしひしと感じた。顔面にぐさぐさ突き刺さる視線が怖すぎて、両目をつぶって事実を告げる。

「高級猫じゃらしでは遊ばないんですけど、デフォルトの猫じゃらしは喜んで遊ぶんですっ!」

「なんだと!?」

 ドスをきかせた低い声に、思わず目を開けてしまった。

 私の顔を見ても真実がわかるわけないのに、これでもかと顔を間近に寄せて、恨みのこもったまなざしで睨み続ける。あまりに近すぎて、須藤課長の顔がぼやけるレベルだった。

 本人は私を脅しているつもりなのかもしれないけれど、傍から見たらまた違ってみえるかもしれないと思いつき、怖々とそのことを指摘する。

「須藤課長、顔が近いです。このままキスできちゃいますよ……」

 この状況を脱したかったため、絶対に顔を遠のかせるであろうセリフを言ったら、須藤課長の顔が首の付け根まで朱を注いだように真っ赤に染まった。

 私の言葉であからさまに狼狽したのか、ミーティングルームの窓際まで素早く後退りする。この間、わずか3秒。長い足をちまちま動かして、転ばずに後退りする様子があまりに滑稽すぎて、吹き出しそうになった。

「この俺がっ、おまえ相手に、そんなことをするわけがないだろ。誤解するにも限度がある。頭がおかしいのか!」
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