私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
『ネコ派はコチラ』の部分をタップして、須藤課長が育成しているネコ屋敷を眺めてみる。

 見るからに課金しましたというグッズが、ところせましと置かれた室内の様子は、これでもかと贅沢を極めていた。こんなところに住んでいるネコに、私が手を出したせいで、なにかあってはいけないと考え、飼育しているネコの紹介をタップする。

『おなまえ:みーたん
 せいべつ:おんなのこ
 すきなもの:ごしゅじんさま・こうきゅうカリカリ・にぼし』

 須藤課長が育成しているネコは、メスの三毛猫だった。ネコと遊ぶことを考え、アイテムを見てみようと思い、持っているもの一覧表をタップしてみると。

(なになに、高級猫じゃらしと高級ネズミに高級毛糸etc……。須藤課長の持っている物すべて、課金グッズばかりだな)

 とりあえず、高級猫じゃらしで遊んでみることにした。左右にふりふり動かしても、みーたんは全然見向きもしなかった。紹介欄の好きなものの中に、高級猫じゃらしがないところを見ると、好みじゃないのかもしれない。

 育成している須藤課長の性格を表しているかもしれないみーたんに、一抹の不安を覚えながら、いろんな高級グッズを使って、なんとかかまい倒す。

 げっそり疲れかけたときに部署の扉が勢いよく開き、須藤課長が戻ってきた。

「おはようさん、須藤課長。例の牧島コーポレーションのこと、あれこれ調べましたで」

 右手をヒラヒラさせながら開口一番話しかけた猿渡さんに、須藤課長が食いつく。

「本店直轄支店に栄転した社員だったな?」

「はい。地方の支店からの栄転ですわ。佐々木さんって方です」

「地方の支店での役職は?」

「それが平社員なんですー。営業成績がめっちゃ優秀だったから、支店長代理に抜擢されたんやろか……」

「あれこれ調べたと前置きしたくせに、大事なところが抜けてるじゃないか。理由を早急に調べてくれ」

「はーい、承知しました。ところで会議は成功したんやね?」

「当たり前だろ。俺の改善案に、全員一致で賛成だったさ」

 私の前で繰り広げられる難しそうな仕事の会話で、須藤課長のスマホでゲームをしていたことが、かなり言いづらい。

「おいヒツジ、俺が不在中はなにをしていた――ゲッ!」

 視線を猿渡さんから私に移動したときに、持っているものを目の当たりにして、須藤課長は息を飲みながら目を見開く。
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