私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
「充明くん意地悪しないでくださいよ。誰もいないのに」

「だからです。こんなところで欲情して君に手を出したら、最後までスルかもしれないくらいに、俺は追い詰められているんです。ここで止めたのを、褒めてほしいくらいだ」

 そう言ったくせに、ふたたび唇が塞がれた。触れるだけのキスは顔の角度を変えて、何度も注がれる。

「ンン…あっ!」

「ずっと触れたかった。こうしてキスしたくてたまらなかった。あんなことを言わなければよかったと、何度後悔したことか……」

 須藤課長はキスしながら、すぐ傍にある壁際まで私を追い込んで、逃げないように両腕で囲う。すぐ近くにいるというのに、ちょっとした距離を縮めたくて、目の前にあるスーツの襟をぎゅっと掴んで、自分に引きつけた。

「充明くんの不器用さを、しみじみ呪いました。仕事中に不意に近づいた私を見て、あからさまに避けることをされた私の気持ちを、どうかいたわってください」

 咎めるような視線を送った私を見て、須藤課長はどう思っただろうか。

「なにをすれば、愛衣さんをいたわることができますか?」

「知ってるくせに……」

 掴んでいるスーツの襟を、上下に強く引っ張った。

「暴発するかもしれないから、絶対にしない」

「暴発って、そんなの――」

「愛衣さんのナカに俺のを挿れることを、何度夢に見たと思ってるんです。寸止めされまくってるせいで、こうしてキスしただけでもイきそうなのに」

 須藤課長は縋りつくように私に抱きつき、肩に額をのせて荒い呼吸を整える。

「ごめんね、充明くん」

「すみません。早く帰りたいのに、熱がなかなか引かなくて」

「私に抱きついてる時点で、無理そうな気がしますよ」

「わかっているのに、抱きつかずにはいられない。君が好きだから」

 掠れた声で告げたあとに、耳朶を緩く噛む。

「んぅっ……弱いところ、知ってる、くせに」

 触れられたところから、須藤課長の熱が体に移っていく気がした。感じるたびにビクつく私を見た途端に、須藤課長はハッとした顔をして両肩を掴み、慌てて距離をとる。そして唇に指を当てて、喋らないように促した。

「……?」

 自分の唇に人差し指を押し当てた須藤課長は、足音を立てずにそろりそろりと歩き、部署の扉をゆっくり開けたと思ったら、一気に駆け出した。そのまま隣のミーティングルームの扉を、勢いよく開け放つ。

「おまえたち! また盗聴していたな?」

 そこには疲れきって出て行ったメンバー全員が、松本さんのパソコンを囲んで顔を突き合わせていた。

「しもうた! なんで見つかったんや?」
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