私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
 唖然とした面持ちの猿渡さんが大きな声で言い放つと、松本さんが口元を引きつらせながら呟く。

「誰だよ、下手な演技して、須藤課長に悟らせたのは。つまらねぇしくじり方しやがって」

「松本、残念だったな。みんなが不自然に足並みをそろえて出て行ったことに、どことなく違和感を覚えたんだ。いつもバラバラに帰っているメンツが、今日に限っては息ピッタリだったからな」

 呆れた表情で須藤課長が指摘したら、原尾さんがぺこりと頭を下げる。

「みんなが息ピッタリだったのは、賭け金を支払うために、ここに集合する約束をしていたからです。俺の一人勝ちだったんですけど……」

 このタイミングで、原尾さんが珍しくオヤジギャグを封印して説明したことを不思議に思って、須藤課長と視線を合わせてしまった。

「賭けって確か、俺がヒツジと付き合えるかどうかだろ。原尾だけ賭けていたって、作為的なものを感じるぞ」

「そないなことに、首を突っ込まんでください。僕らの賭けなんやから、どうだって」

「やめておけ。須藤課長に隠し事をするなんて、土台無理な話だったんだ」

 猿渡さんのセリフを遮り、松本さんが一万円札を机に置いた。

「そうそう。僕たちは必然的に、お金を払うことが決まっていたんだから」

 高藤さんも一万円札を松本さんが置いた上に置くと、山田さんと猿渡さんも同じことをした。

「お金がそろったので、封筒に入れますよ」

 山田さんが手早くお札を数えて、用意していた封筒に入れる。封筒の表書きを見て、須藤課長はボソッと口を開いた。

「もしかして原尾の娘さんの――」

「そうや。難関の私立高校に入学したって小耳に挟んだのやけど、原尾さんの性格上、僕らがお祝い金を渡したら、めちゃくちゃ遠慮するのが想像ついたから、こんなけったいな渡し方になってしもうたんやけど、これから学費がかかる娘さんのために、是非とも使うてやってな! おめでとさん!」

 山田さんから原尾さんに、お祝いが手渡される。

「待ってくれ、俺もお祝いを渡したい」

「アカンで、それは。僕らは賭けの結果を渡したに過ぎないんや。渡すなら童貞を捨ててから、胸を張って個人的に渡してあげたらええで」

 猿渡さんの待ったに、須藤課長の頬が赤く染った。

「ヒツジちゃん、今夜は寝かせてもらえないだろうから、明日は有給をとったらいいんじゃない?」

 意味深な笑みを浮かべた高藤さんに、なんと返事をしたらいいのか――。

「雛川さん、須藤課長しつこそうだから、歯を食いしばって頑張ってね」
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