私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
「猿渡、聞くだけ野暮だろ。そこの椅子にヒツジが座った時点で察しろって。須藤課長のXLのナニを使って、一晩中ガンガン責められた挙句に、寝不足ってな」

(一晩中なんて責められてません。須藤課長と私の体の相性がよすぎて、イカされっぱなしだっただけです――)

「松本っちゃんこそ野暮やなぁ。須藤課長の貴重な童貞喪失の場面を聞かんと、僕らの無駄な苦労が報われないやん」

 猿渡さんが言い終えながら自分の席に戻った途端に、メンバーの視線が須藤課長の席に座る私に向けて、一斉に注がれた。

「ヒツジちゃん、須藤課長は無事に童貞を喪失することができたんですよね?」

 須藤課長の指南役の高藤さんが、ほほ笑みながら訊ねた。

「はい。高藤さんの御指導のおかげで、私の体に負担をかけることなく、なんとかなりました」

 興味津々に見られることが恥ずかしすぎて、俯きながら答える。

「偉いわぁ、ヒツジちゃん。騎乗位で須藤課長の童貞をねっこり奪うとか、恋人の鏡やで!」

「うんうん。男性器が小さくて、女性側がドン引くって聞いたことあるけど、無駄に大きすぎても怖いよね」

 猿渡さんに変に褒められ、原尾さんはオヤジギャグを封印して普通の会話をする状況に非常に困った。正直、笑うに笑えない。

「問題はここからだぞ。童貞喪失した須藤課長の性格に、変化があるかどうか――」

 松本さんの指摘に、山田さんが手をあげる。

「好きだった人とめでたく相思相愛になり、無事に一夜を迎えることができて、男としての余裕が出る可能性は、たぶんないと思います」

「えっ、ないんですか?」

 昨夜から甲斐甲斐しくお世話されまくっていたので、男としての余裕がないと、そういうことができない気がした。私の問いかけに、松本さんが人差し指を顔の前で左右に振る。

「あの人、性格がめんどくさい方面に尖がってるだろ。俺らがヒツジにちょっかいかけただけで、「手を出すな!」とかなんとか言って激昂しそうだけどな」

「誰が俺の愛衣さんに、ちょっかいかけるって?」

 松本さんの背後に立ち竦んだ須藤課長が、額に青筋を立てたまま、唇の端をぴくぴく痙攣させる。

「あらら~。まさにグッドタイミングというべきやね」

「松本さん、この場は諦めて、頭を下げたほうがいいですよ」

「いつもより二割増しで怖さがましてルンバ!」

「ご愁傷様です……」

 などなど、メンバーそれぞれから声をかけられた松本さんは、なにもしていないというのに、須藤課長に謝った。
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