私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
***
昨夜のように須藤課長にかかえられることはなかったものの、マンションから一緒に出勤する際は『俺の腕に捕まって歩けばいい』と、私の顔を覗き込みながら心配そうな面持ちを露にされたので、素直に従った。
ものすごく恥ずかしかったけど、須藤課長に心配させてる手前、自ら腕を外すことができず、社内でもその状態を続けたら、よその部署の方々が驚きの目で私たちを遠くから眺めるという、妙な構図ができあがってしまった。
注がれる遠くからの視線に耐えながら、経営戦略部に到着。メンバー全員が私たちの交際を知っているので、さっきよりも気が楽になる。
「おはようございます……」
いつものように挨拶したというのに、経営戦略部のメンバーは誰ひとりとして挨拶を口にすることなく、じっと私たちを見つめる。というか重役出勤する猿渡さんが私よりも早く来ていることが、驚きなんですけど――。
「ほらヒツジ、おまえはここに座って、みーたんの世話をしとけ。ログインボーナスを受け取ることを忘れるなよ」
須藤課長は自身の腕を掴んでいる手を外し、優しく握りしめながら引っ張ると、須藤課長のデスクの椅子に私を座らせた。私が普段座っている椅子よりもちょっとだけ座り心地のいいそれは、確かに腰に負担が少ないと思われる。
「あの、私の朝の仕事――」
「それは俺がやる。かわいい部下たちに、たまには上司がコーヒーを淹れてやるのも悪くないだろ」
肩からふたりぶんの鞄をおろしてデスク脇に置き、私の手にスマホを握らせてから、颯爽と部署を出て行く大きな背中を、なんの気なしに眺めるしかなかった。
「かわいい部下って、ぜってー違う意味のかわいいだろ……」
どこか面白くなさそうに言いきる松本さんに、高藤さんが苦笑いをした。
「ほんとそれ。でも童貞喪失したおかげで、なんか吹っ切れた顔をしてましたよね」
「そうでしょうか。俺の目には、違う種類のなにかが見えましたけど」
山田さんがパソコンの画面を見ながら、ぽつりと呟いた。
「あー、山田くんの言いたいことがわかる気がすルンバ。見えないけど、なにかがそこにあるっていう感じなんだけドラえもん」
「僕にはそれがさーっぱりわからんのやけど、それよりもヒツジちゃん。昨日はどうやった?」
原尾さんのセリフを肯定せずに、猿渡さんが嬉々とした顔で須藤課長のデスクまでやって来て、糸目をちょっとだけ見開きながら私に問いかけた。
昨夜のように須藤課長にかかえられることはなかったものの、マンションから一緒に出勤する際は『俺の腕に捕まって歩けばいい』と、私の顔を覗き込みながら心配そうな面持ちを露にされたので、素直に従った。
ものすごく恥ずかしかったけど、須藤課長に心配させてる手前、自ら腕を外すことができず、社内でもその状態を続けたら、よその部署の方々が驚きの目で私たちを遠くから眺めるという、妙な構図ができあがってしまった。
注がれる遠くからの視線に耐えながら、経営戦略部に到着。メンバー全員が私たちの交際を知っているので、さっきよりも気が楽になる。
「おはようございます……」
いつものように挨拶したというのに、経営戦略部のメンバーは誰ひとりとして挨拶を口にすることなく、じっと私たちを見つめる。というか重役出勤する猿渡さんが私よりも早く来ていることが、驚きなんですけど――。
「ほらヒツジ、おまえはここに座って、みーたんの世話をしとけ。ログインボーナスを受け取ることを忘れるなよ」
須藤課長は自身の腕を掴んでいる手を外し、優しく握りしめながら引っ張ると、須藤課長のデスクの椅子に私を座らせた。私が普段座っている椅子よりもちょっとだけ座り心地のいいそれは、確かに腰に負担が少ないと思われる。
「あの、私の朝の仕事――」
「それは俺がやる。かわいい部下たちに、たまには上司がコーヒーを淹れてやるのも悪くないだろ」
肩からふたりぶんの鞄をおろしてデスク脇に置き、私の手にスマホを握らせてから、颯爽と部署を出て行く大きな背中を、なんの気なしに眺めるしかなかった。
「かわいい部下って、ぜってー違う意味のかわいいだろ……」
どこか面白くなさそうに言いきる松本さんに、高藤さんが苦笑いをした。
「ほんとそれ。でも童貞喪失したおかげで、なんか吹っ切れた顔をしてましたよね」
「そうでしょうか。俺の目には、違う種類のなにかが見えましたけど」
山田さんがパソコンの画面を見ながら、ぽつりと呟いた。
「あー、山田くんの言いたいことがわかる気がすルンバ。見えないけど、なにかがそこにあるっていう感じなんだけドラえもん」
「僕にはそれがさーっぱりわからんのやけど、それよりもヒツジちゃん。昨日はどうやった?」
原尾さんのセリフを肯定せずに、猿渡さんが嬉々とした顔で須藤課長のデスクまでやって来て、糸目をちょっとだけ見開きながら私に問いかけた。