【女の事件】続黒煙のレクイエム
第16話
その日の夜8時過ぎのことであった。

アタシはセブンイレブンで夜のバイトをしていた時に、めんどい事件が発生した。

めんどい事件は、かつひこが亡くなった時に支払われる生命保険の保険金を請求する際に必要な証書の受取人の欄の名前が知らない名前の女性の名前になっていて、1億8000万円の保険金が全額もって行かれたので困っている…助けてほしいと言うことであった。

その上に、大船渡市内のセメント工場の敷地内で事故を起こしたダンプカーの運転手の男性が亡くなったあと、運転手のお子さまのために加入していた子供向けの総合保険で残されたお子さまのために下りる予定であった育英資金がきれいに抜き取られていたことが明らかになった。

亡くなった運転手さんの男性のお子さまに下りる予定であった育英資金5000万円がやはり知らない女性の名前が請求する書面に記載されていたので、大さわぎになっていた。

2つの大金を受け取った女性は、こともあろうにつばきちゃんであった。

アタシがバイト中の夜8時半過ぎに、さよこが弁護士さんと一緒に店に突然やって来て、アタシに保険金のことがどうのこうのと言うて言いがかりをつけてきた。

アタシはこの時『アタシがバイト中にどうしてめんどいことを聞いてくるのよ!?』と言うて、さよこを思い切り怒嗚りつけた。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに並べながらさよこにこう言うた。

「あんたね!!アタシがバイト中に突然店に押し掛けてきて、聞いたことのない名前の女に保険金を抜き取られたからので困っている助けてほしいと言うてアタシにイチャモンつけてきたわね!!弁護士をつれてくるなんてやり方が汚いわよ!!アタシはその事で相当怒っているのよ!!」
「こずえさん、困っているのはアタシだけじゃないのです…事故を起こしたダンプカーの運転手さんのご家族のみなさまも困っているのよ…ダンプカーの運転手さんのお子さんは…まだ1歳8ヶ月なのよ…運転手さんの奥さんが半年前に交通事故で亡くなっているので…両親がいなくなったのよ…」
「だからなによ!!あんたらはアタシにどないしてほしいと言いたいのかしら!?あんたの義父が運転手を殺したけん、損害賠償を払わないといけない!!そのためにかつひこの生命保険の保険金がいると言うことなのかしら!?」
「そうなのよ!!かつひこさんが亡くなった時の保険金で運転手さんのお子さまに対して損害賠償を払う予定でいたのよ!!育英資金が抜き取られたけん、損失を補てんするためにいるのよ…育英資金がなかったら、お子さんは高校に行けなくなるのよ…」
「はぐいたらしい(あつかましい)わねあんたは!!それって、アタシが全部悪いと言うことなのかしら!!」
「そんなことは言うていないわよ…」
「あんたね、弁護士をつれてくるなんてやり方が汚いわよ!!」
「弁護士さんは、ジダンコウショウをするために必要だから呼んだのよ…お願いだから落ち着いてください。」
「やかましい!!あんたが連れて来た弁護士はね!!ヤクザの顧問弁護士だったのよ…極悪非道のヤクザ組織の顧問弁護士をなんで連れて来たのよ!!あんたね、人の話を聞いとんかしら!!」
「こずえさん!!弁護士さんは、ダンプカーの運転手さんのお兄さん夫婦から頼まれて弁護を引き受けているのよ!!」

さよこは、話し合いができないので代わりに弁護士さんに話をしてほしいとお願いをした。

弁護士さんは、さよこに代わっておだやかな声でアタシにこういうていた。

「お忙しい時にもうしわけございません…私は弁護士のY部と申します…」
「帰んなさいよ!!アタシはあんたみたいなヤクの相手をしているヒマは1秒もないのよ!!」
「お気持ちはわかりますが…すみませんけれど…しばらくの間だけでもいいので…お仕事の手を…」
「アタシの仕事の手を止めて何がしたいのかしら!?」
「何がしたいって…私どもは…ダンプカーの運転手さんのお兄さん夫婦に…」
「はぐいたらしい(ムカつく)わねインテリ弁護士!!」
「ぼくのどこがインテリなのですか!?」
「そうやってすぐに頭カッとなって、女に暴力をふるう気なのね!!あんたどこの大学出身なのかしら!?」
「どこだっていいでしょ!!」
「あんたね!!法務関係の大学をトップで卒業したと言うのであれば、日本国憲法の第1条の文章を言ってみなさいよ!!」
「えっ…第1条を…えーと…第1条は…天皇陛下は…天下の…」
「ゼンゼンダメみたいね…それは明治憲法の第1条でしょ…」
「どっちだっていいじゃないですか!!」
「何なのかしらあんたは一体!!法務関係の大学卒業だなんてデタラメだわ!!」

アタシの言葉は、弁護士さんの脳天を直撃した。

弁護士さんは『すみませんでした…大学中退でした…』と言うたけん、アタシは冷めた声でこう言い返したった。

「休学したあげくにどうしたと言うのかしら…」
「だから!!7年後に奮起して大学を頑張ったのですよ!!遊びごとを絶って一生懸命になって勉強をして…去年やっと弁護士の資格が取れたのですよ…」
「やかましいわね!!人の職場に突然フラりとやって来て営業妨害をしに来たけん、あんたが所属している弁護士会に抗議するわよ!!」
「抗議するって…困ります!!」
「アタシは本気なのよ!!今から知人に電話するけん、アタシの知人にもヤクザがおるけん、あんたの家をダンプカーでぺっちゃんこにつぶすから覚悟しておきなさいよ!!」
「困ります…」
「こずえさん!!弁護士さんはね!!こずえさんのことをうたがっているわけじゃないのよ!!」

アタシは、スマホを取りだしたあと知人のヤクザの組長に電話をかけていた。

「もしもし組長!!アタシ…こずえよ!!アタシの前にストーカーの弁護士とストーカーのカノジョがいるわよ!!ストーカー弁護士の家をダンプカーでつぶしてくれるかしら!!ほんで、ストーカー弁護士の家の親類のドタマをチャカでぶち抜いてくれるかしら!!ストーカー弁護士の婚約者もアタシの男をドロボーしたけん、コンクリ詰めにして、東門の埠頭に沈めてくれるかしら!!」

さよこと弁護士さんは、怖くなったのでその場から逃げだした。

「逃げるな!!」

何なのよ一体!!

さよこは、アタシが全部悪いと言いたいわけなのかしら!!

もうだめ…

アタシは…

がまんの限界が来たみたい…

アタシは、がまんの限界が来ていたのと同時につばきちゃんのことを許すことができなくなっていた。
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