【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい

 こちらを振り返らずぐんぐんと進む綾木くんは、リノリウムの廊下を抜けて、渡り廊下に出た。
 冷たい風に頬を撫でられていると、綾木くんがこちらを振り返る。その顔は柔く緩んでいて。

「強くなったな、梅子」

 優しい笑顔を向けられて、胸にいろいろな感情が津波のように押し寄せてくる。

「あ、あ、あ」

 感情が言葉にならず、短音を打つわたしの上に、綾木くんが手を置いた。そして腰を軽く曲げ、わたしと目線の高さを合わせてくれる。

「ゆっくりでいい。ちゃんと聞いてるから」

 そうだ。綾木くんはいつだってわたしの言葉を待ってくれた。
 わたしは心音を整えるように深呼吸をすると、お腹の底から声を出す。自分の思いを伝えるだけなのに、なぜか鼻の奥がつんとして、涙腺が緩む。

「……綾木くんを幸せにできるくらい、……つ、強くなりたかったの」
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