【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい
すると綾木くんは笑みを唇にのせたまま、まっすぐにわたしの目を射てくる。
「それには条件がある」
「え?」
「俺より先に死なないこと」
切実な声で彼が提示したたったひとつの条件。
――ああ。何度も涙の波が襲ってきて困る。
わたしは涙をこらえながら、綾木くんに開いた手を向けた。
「そ、そ、そう簡単に死なないよ……! わ、わわ、わたしの生命線、と、とっても長いからっ!」
すると綾木くんが破顔した。差し込む光に涙を反射させながら、誰より幸せそうに。
こんな笑顔、初めて見た。10年後の綾木くんの中にも見つけられなかった笑顔を、わたしはようやく見つけることができた。
……ねぇ、綾木くん。
初恋を、もう一度やり直させてね。
終わりのない明日を君の隣で見ていたいから。
◻︎fin
