【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい
「なんだ、あいつ。可愛いとこあるじゃん」
話題にされていると信じた柳さんはまんざらでもなさそうに笑っている。無事ごまかせたらしい。
「君、綾木の生徒なんだね」
「はい」
頷くと、今初めて気づいたというように、柳さんがわたしの制服の校章
「たしかに若葉高校の制服だ。すごい偶然だな」
「はい、ほんとに」
すると不意に柳さんが腰をかがめて顔を覗き込んできた。
「ところで君さ、その様子じゃ歩けないよね? 俺の家近いんだけど、来る? 簡単な処置ならできるよ」
「えっ、そんな、悪いです!」
「今日は奥さんが友達と遊びに出かけてて、娘とふたりなんだ。手当がてら、娘の相手をしてくれたら助かるなって」
毒っ気のない穏やかな笑みを浮かべる柳さん。
この人は、一緒にいて相手にまったく気を遣わせない人だと思う。漠然といい人なのだろうと思っていたけれど、綾木くんが気を許していた理由が、話してみて初めてわかった気がした。