【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい
だけど皇くんは、焦るわたしに反して不思議そうな顔をした。
「いや、送るし」
想定外の申し出に一瞬面食らう。それはありがたいことだけど、そういうわけにはいかない。先生と同じマンションに住んでいることがばれるのはまずいし、この時間に帰ったら先生と鉢合わせてしまう可能性だって充分にあり得る。それは絶対に阻止せねばならない。
「ううん! ひとりで帰れるから!」
「はあ? なんでだよ」
食い下がる皇くんに、ぐっと下唇を噛み、頭をフル回転させ必死にそれらしい言い訳を絞り出す。
「なんでって……い、家が汚いから」
言った直後、さすがにこれは無理があったかと焦っていると、皇くんはなにかを察したように哀れみの眼差しを向けてきた。
「……お前ん家、ゴミ屋敷なのか……」
信じた……!と、言ったわたしが驚いてしまう。見た目とは反してピュアな皇くんの一面に、思いがけなく救われた。