【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい

 すると不意に、グラウンドの熱気に埋もれそうなほど微かな声で、皇くんがぼそっと呟く。

「俺、あんたのこと……」
「え?」
「うるせー馬鹿、黙れ、なにも言うな」

 さっきまでの雰囲気とは一変、なにも言っていないのに突然ぶつけられた暴言の応酬に、耳がキーンとする。
 けれど、頑なにこちらを振り向こうとしない皇くんの耳は赤い。その熱は見ているこちらにまで移りそうだ。
 するとようやく皇くんがこちらを振り返った。

「つーかお前、早く着替えてこいよ。次の種目終わったら応援合戦だぞ」
「……あれっ?」

 皇くんに指摘されて気づく。そういえば机の中に入れていたチアリーダー衣装を持ってこないまま、手ぶらでグラウンドに出てきてしまったかもしれない。

「まずい、教室に置いてきたかも……!」

 焦るわたしに、皇くんは盛大な呆れ顔を作る。

「はあ? ったく、馬鹿だな」
「取りに行ってくる……!」
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