極上パイロットが愛妻にご所望です
 休憩時間が残り十五分になり席を立ったとき、ふいに名前を呼ばれた。

「ミズキ・サワさんですか?」

 驚くことにハンナさんがすぐそばにいて、不安そうな笑みを浮かべていた。青い瞳は私が首から下げているIDカードを見ている。

「あ……は、……い」

「お話があります。少しの時間でいいので、お願いします」

 流暢な日本語のハンナさんは不安そうに見えながらも、強引さが窺える。

 住田くんが不思議そうにハンナさんと私を交互に見ていた。

「五分くらいなら。住田くん、先に行ってて。すぐ戻るから」

 住田くんは「はい」と言いながらも、興味津々といった感じで仕方なくトレイを持って去っていく。

 なぜ私をハンナさんが見つけられたのかと思ったけど、事務所へ行けば勤務形態はすぐにわかるから、簡単だったかもしれない。

「廊下へ出ましょう」

 ここでは注目を浴びている気がする。目立っているのはハンナさんの容姿のせいだろう。

「わかりました。先に行っています」

 私はトレイを持ち、返却カウンターへ戻す。そして、出入口に立っているハンナさんの元へ歩を進めた。

 彼女のほうへ向かいながらも、用件は朝陽のことに違いないと確信している。

 食堂近辺は人が頻繁に行き交うので、私たちは少し離れたところへ移動した。


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