極上パイロットが愛妻にご所望です
 対面に向き直った瞬時、ハンナさんは怖いくらいの真剣な顔つきになった。弧を描いた眉で、気が強そうでもあるが、とびきりの美人であることは間違いない。

 こんなときなのに、サファイアのような瞳だな、なんて、見てしまっている。

「アサヒと別れて。彼と私は結婚をするの」

 どうして私が朝陽の恋人だとわかったのだろう? 内緒にしているのに。

「私を知っているんですか?」

「ええ。アサヒが教えてくれたので。彼はあなたに別れ話をすると言っていました。私が先にあなたに話したのは、いきなりアサヒから聞かされるより、ショックが少ないと思ったんです」

 朝陽でもハンナさんでも、どっちにしろ、そんなことを言われたらショックは受ける。実際胸の奥がズキズキしてきていた。

「アサヒは優しいので、申し訳ないと思っています。あなたは彼を愛しているのでしょう? 彼のためを思ったら……だから、あなたから別れると言ってほしいんです」

 ハンナさんのお願いは支離滅裂。どうして別れを切り出される私のほうが、気を使わないといけないの? でも愛の話を持ち出されてしまっては……。

 口に出せず、思案していると、ハンナさんは畳みかけるように口を開く。

「私と結婚することでANNはさらに大きくなっていくんです。家族は私たちを祝福しています」

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