極上パイロットが愛妻にご所望です
「腹が減って起きた?」

 口角を上げてからかう朝陽だ。

「そうみたい。ごめんなさい。車の中で寝ちゃって。重いのに……」

「砂羽くらい運ぶのはわけない。座ってろよ。ちょうどできたから」

「手伝うよ」

 私はキッチンの中にいる彼に近づく。

 朝陽が作ってくれていたのはナポリタンだった。

「じゃあ、ワインセラーから飲み物出して。白ワイン、少しくらいなら飲める?」

 彼は私に気遣いながら、フライパンから皿にナポリタンをよそっている。

「うん。白ワインとグラス用意するね」

 七時間近くも眠ったおかげで、頭はスッキリし、疲れもとれた気がする。でも、頭の中には朝陽とハンナさんのことがずっとあって。

 朝陽から背を向け、スタイリッシュなすりガラスになっている食器棚からワイングラスを二脚と、四十本ほど入るワインセラーの下段からよく冷えた白ワインを出した。

 テーブルに並べていると、朝陽が両手にナポリタンの皿を持って、やってくる。

 トマトベースとニンニクの食欲をそそるにおいに、十五時間くらい食べていないお腹が鳴りそうだ。

「どうぞ」

 彼に椅子を引かれ、私は着席する。

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