極上パイロットが愛妻にご所望です
 そこに朝陽はいた。ベッドの上で横を向き身体を丸めたような姿で眠っている様子。このような格好を目にするのは初めてで、なにかがおかしいと感じ、ベッドの横に立った。

「朝陽?」

 声をかけても瞼は開かれない。

 覗き込んでみると、彼の額にいくつもの汗が浮かんでいた。

「あ! 朝陽っ、熱があるのね!」

 手を伸ばし、彼の額に置いてみればいつもより高い熱が伝わってきた。私の手が触れて朝陽の目が開く。

「砂……羽……来てたのか……」

 いつもよりかすれた声だった。

「熱が高いよ! 病院へ行こう」

 パイロットは常に体調管理を重視している。朝陽も健康に気をつけていたのに、風邪をひいてしまったらしい。

「……行ってきたから。ごめん。うつるから、帰って……ゴホッ……」

「嫌よ。こんな状態の朝陽を置いてなんて帰れない」

 すると、彼は怠そうに上体を起こして、ぼんやりした熱っぽい瞳で私を見つめる。

 朝陽はワイシャツとスーツのズボン姿だった。

 帰宅後、そのまま眠ったということはよほどつらかったのだろう。

 ワイシャツもズボンも皺くちゃになっていた。
 
 ボタンが数個開けられたワイシャツから覗く鎖骨、その下までのラインが不謹慎だけど男性の色気を感じてしまい、ドキッとしてしまう私だ。


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