極上パイロットが愛妻にご所望です
「誰がお前に教えたのかは検討がつくが」

「もちろん。汐里(しおり)は俺の味方だから。あ、砂羽。ドリンクを持ってきてくれたさっきの秘書の女性は一条医師の妹なんだ」

 一条医師といえば、私の腱鞘炎を診てもらった一条総合病院のあの時の医師だ。先生の妹さんがAANで秘書をしていたのだ。

 きれいな女性だったな。とても感じがよくて。

「とりあえず、忙しいなんて言っていないで結婚式場と日取りを決めるんだな。砂羽さん、早ければ早いほどいい。手伝いが必要なら俺の秘書を貸すからいつでもどうぞ」

 ここへ来るまでは朝陽と別離を考えていたのに、目まぐるしいほどの展開に、桜宮専務の言葉に頷くことしかできない。

「じゃあ、俺たちは行くわ。親父にペラペラ話すなと釘を刺しておいてくれ」

 朝陽がソファを立ち、私も習う。

「わかった。おかげで株価が下がったんだ。すでに収拾しているが」

 AANの御曹司である朝陽はパイロットでも特別な存在のようで、些細なデマひとつで株が左右されるようだ。

「へえ。兄貴、さすがだな」

「ああ。お前たちの婚約を株主向けのホームページで公表したら、すぐに回復した」

 それを聞いた朝陽がニヤッと不敵に笑う。


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