極上パイロットが愛妻にご所望です
「これは俺が代わりに書類を書いておくから、出社したら印鑑を押して、総務部に提出して」

「自分でしますっ。桜宮さんはお忙しいことですし」

「これくらい、わけないから。数日間はまともな字が書けないだろ？　行くぞ」

　桜宮さんは封筒をジャケットの内側のポケットに入れ、困惑している私の背を軽く押して出口に向かわせる。

　パーキングスペースに停められている桜宮さんの車は、周りに停められている車よりも目立っていた。

　まだ当惑中の私の頭でさえ、優美で堂々としたパールホワイトの車は、桜宮さんみたいだと考えを巡らせてしまう。

　桜宮さんはジャケットの袖を少し上げて時計へ視線を落とす。

　まだ外は明るいけど、時刻は十七時を回っていた。

「桜宮さん、ありがとうございました。ここからひとりで帰れます」

　ここは電車で自宅から五つ目の駅だ。ここは駅からすぐのところのようだし、問題なく帰宅できるだろう。

　車までついてきたのは、引き出物を預けていたからだ。

「約束は十九時だからまだ時間は大丈夫だ。話がしたい。終わったら送っていく」

　有無を言わせない口調で助手席のドアを開けた彼は、私をまっすぐ見つめる。

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