極上パイロットが愛妻にご所望です
「話……ですか？」

「そう。どうやらちゃんと目と目を合わせて言わないと君はわからないようだから。乗って。近くのカフェに入ろう」

　どういうわけか桜宮さんは私と話をしたいと言う。

　理解しがたい状況だった。

「砂羽？」

　彼から再び名前を呼ばれた私は目を大きく見開いた。

「どうしてそんなに驚く？　君は水樹砂羽だろ？」

「そ、そうですが……」

「いいから。早く乗って」

　仕方なく助手席に乗り込むと、ドアが静かに閉められた。
　

　十分後、一面の大きな窓から東京湾が見えるカフェレストランに到着した。店内はビジネススーツ姿の男性やアフターファイブの女性グループが数組いて、ビール片手に楽しそうである。

　窓際のテーブルに案内され、四人がけのテーブルに私たちは落ち着く。

「なんでも頼んで」

　店員にメニューを差し出され、無意識に右手を出してしまうと、「俺がもらいます」と、桜宮さんが受け取る。

　店員がその場を立ち去り、彼はメニューを開きながら顔を顰めて首を左右に振る。

　なんだか呆れている様子。

「右手は使わないように言われただろ？」

「あ、は……い……。つい……」

「気をつけて」

　軽くたしなめる桜宮さんにペコッと頭を下げて、メニューから飲み物を決める。

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