極上パイロットが愛妻にご所望です
「砂羽の名前って、人に説明するとき、どう教えるの?」

 突然突拍子もない質問に、私はキョトンとする。

「えっと、お砂場の砂に、鳥の羽です」

 昔から聞かれることもあって、いつもこう答えていた。

「よかった」

 桜宮さんの顔に嬉しそうな微笑みが広がった。

「よ……かった……?」

「ああ。気にしないで。飲もう」

 彼がブラックコーヒーのままひと口飲むのを見てから、私もカフェオレのカップを左手で持つ。右手は気をつけていますアピールだ。

「いただきます」

 葉の模様に描かれたカフェオレを、熱さに気をつけながらコクッと喉に流し込む。

「砂羽、俺を見て」

 桜宮さんの声が耳を甘くくすぐり、胸がトクンと跳ねた。カフェオレのカップから顔を上げたくなかった。

 改まった言い方に、どんな顔で彼を見ればいいのかわからなかったから。

「砂羽?」

「は、はい……」

 私は大きく深呼吸をして、そっとカップをソーサーに戻して前を向いた。

「付き合って、俺のことを知ってほしい」

「……桜宮さんのような人が私にそんなことを言うなんて信じられません」

 目と目を合わせ、真摯な瞳で見つめられている。でも、まだ信じ難いのだ。桜宮さんなら容姿端麗の美女が選り取り見取りなのに。

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