極上パイロットが愛妻にご所望です
「順調に回復しています。少しでも痛みを感じたらすぐに診察に来てください」

「わかりました。ありがとうございます」

 順調だと太鼓判を押され、私の顔に笑みが広がる。

「って、ことで診察は終わり。個人的な話をしても?」

 一条先生は前回と同じく、看護師を診察室から出してから聞いてくる。

「えっ? こ、個人的な話……ですか?」

「そう。朝陽とはどうなったの?」

 桜宮さんの名前が出て、私は目を大きく見開く。

「ど、どうにもなっていません。桜宮さんはお忙しいのであれから会っていませんし」

 困惑しながら答えると、なぜか一条先生の顔に落胆の色が見えた。

「そうなんだ。忙しすぎるのも問題だな。さぞかしヤキモキしていることだろう」

 一条先生はぼそっと口にしてから、端整な顔を緩ませる。

 ヤキモキ……?

 聞き間違えなのか、私は小首を傾げる。

「では、完全に痛みが消えるまで、重いものを持たないように。痛みがあるようならすぐに来てください」

 好奇心から桜宮さんのことを聞いたのだろう。すぐに医者の顔に戻った一条先生に困惑しながらも「わかりました」と返事をして、診察室を出た私だった。

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