極上パイロットが愛妻にご所望です
 病院を後にして駅前に美味しそうなパティスリーを見つけ、そこで手土産のフィナンシェを買い求め、電車に乗った。

 時刻はあと十五分で十二時になるところだ。『ランチを食べに来てね』と言われていたからちょうどいい時間だった。

 二駅乗って、改札を出たところのタワーマンションが久美の新居だ。

 改札を抜けたとき、スラリとしたモデルのような久美が目に入った。電車に乗ってから、十分ほどで着くとメッセージを打っていたので、迎えに来てくれたよう。

 駅前で目立つタワーマンションだから、子供でもわかると思うのに……。

「砂羽!」

 彼女も私に気づいて手を大きく振る。

「久美、迎えに来てくれなくても平気だったのに」

「それが料理失敗しちゃって」

 久美のきれいな顔がシュンさせ、なんだか落ち込んでいる様子。

「失敗なんてよくあることじゃない」

 私だってそんなに料理は得意じゃない。しかも久美は自宅通勤だったから、料理はいつもできている状態。CAの忙しさでは花嫁修業もできなかっただろうし。

「ごめんね。砂羽に手料理を食べさせたかったんだけど。この近くのレストランを予約したの。食事をしてからうちに来てね」

「うん。そうしましょう」

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