屍病
時間が経てば、他のイーターも気付いてしまうかもしれない。


そもそもがどれくらいのイーターがいるかもわからない。


包丁とフライパンを持って、調理実習室のドアに付いている窓から廊下を覗く。


真っ暗なのは相変わらずで、それでもこの暗闇には随分と慣れた。


廊下の真ん中には杉山先生の遺体があるのは見えるけど、それ以外には何もない。


「もう……勘弁してよ。私には男子ほどの力も、真倫ちゃんの勇気もないんだから」


手が震えているのがわかる。


こんな状態で、イーターと対峙した時に、真倫ちゃんのように躊躇なく武器を振るえるのか。


はっきり言って無理だと思う。


怖くて縮こまって、茂手木のように悲惨な死を迎えるのは目に見えているけど。


それでもやらなければ、他の皆がそうなってしまうかもしれないのだ。


「せめて高下さんがいてくれたら……」


ひとりではダメでも、ふたりなら何とかなるかもしれないのに。


ゆっくりと調理実習室を出て、私は廊下を屈みながら歩いた。


ガラスが割れた場所を見付けるのが先か、イーターに遭遇するのが先か。


空気は生暖かいのに、私の身体はどんどん冷たくなって行くようで、この状況に戦慄しているのがわかった。
< 62 / 238 >

この作品をシェア

pagetop